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2023年4月 2日 (日)

本屋大賞の実施事業、年1,000万円近くに膨れ上がる。

 いま現在、直木賞一回あたりの経済効果は2億円、対して本屋大賞のそれは3倍近い5億8,000万円ぐらいだ、と言われています。

 ……とまあ、そんなのは(もちろん)真っ赤なウソですけど、ワタクシ自身、春になると自然と本屋大賞を欲するからだになってしまいました。今年も「直木賞のすべて」のわきのスペースを借りて、「本屋大賞のすべて」というサイトをつくりましたが、準備期間約2か月、こんなのに時間をかけても何のおカネにもなりゃしません。そうさ、文学賞に対する興味は、いつだってプライスレス。本屋大賞は毎年楽しいので、それはそれで文句ありません。

 野次馬にとって、おカネのことなんかどうでもいいです。しかし本屋大賞といえば、本を売りたいんだ、本を買ってほしいんだ、という思いで始まった経緯があります。いわばおカネを前提にした事業と言ってもよく、ノミネート発表から受賞発表、そしてその後にいたるまで、出版業界、印刷業界、メディアを含めて、ドロドロ、ズブズブ、カネまみれの文学賞であることは確かな事実です。

 こないだ『読売新聞』に載った本屋大賞に関する記事でも、やっぱりおカネのことが出ていました。

「インターネットなどの影響で、文芸書を取り巻く環境は厳しい。出版科学研究所によると、04年に9429億円だった紙の書籍の推定販売金額は、22年には6497億円に減少した。」(『読売新聞』令和5年/2023年3月2日「「本屋大賞」20回目 出版不況下 名著発掘の場に」より ―署名:文化部 川村律文)

 平成16年/2004年からこの20年間で、紙の本は急激に売れなくなってきている。とおカネのことが持ち出されています。この賞を目の前にすると、つい目ん玉が¥マークになってしまう。本屋大賞の宿命です。

 ということで、今週は本屋大賞にまつわるおカネのことを取り上げます。

 ところで、あの催しって、毎年どのくらいかかっているんでしょうか。主催しているNPO法人本屋大賞実行委員会が、毎年の収支をホームページで公開しています

 決算書が初めて公開されたのが平成17年/2005年度(平成17年/2005年6月1日~平成18年/2006年5月30日)です。平成18年/2006年4月に、リリー・フランキーさんの『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』が大賞をとった時期で、フリーペーパー『LOVE書店!』の発行事業を除いて大賞実施事業だけを見ると収支は大きく赤字。約280万円入って、約420万円かかったために、140万円程度のマイナスになったそうです。

 ちなみにそのころ、直木賞はどうだったのか。以前、羽鳥好之さんを取り上げたエントリーで触れました。

 直木賞の主催者は、本屋大賞とちがって、5つも文学賞をやっている公益財団法人日本文学振興会で、平成16年/2004年度の収支決算書によると、1年の直木賞の事業費は約3,000万円。1年に2回やるので、1回あたり約1,500万円程度だった、ということになります。

 ざっくり言ってしまえば、本屋大賞400万円 対 直木賞1,500万円の構図。3~4倍のひらきがあります。

 400万円の賞だってけっこうな規模だろ、とは思います。でもまあ、手づくり感満載であることを打ち出して、まんまと世間の心をつかみながら本屋大賞も回を重ねて今年で20年。収支計算書のうえでも、実施事業の収入が1,600万円を超える年も出てきました。近年では、1,000万円近くの収支を続け、しかも黒字に転じています。

 ああ、もはや庶民には手の届かない存在になってしまったんですね(……って、庶民って何だよ)。今年もきっと、目ん玉を¥マークにした人が本屋大賞を盛り上げるんでしょう。直木賞オタクとしては、それを指をくわえながら遠目で楽しみたいと思います。

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