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2023年1月15日 (日)

第168回(令和4年/2022年下半期)直木賞候補者は、どれだけ賞金を稼いできたか。

 文学賞の最大の特徴は何でしょうか。それは、受賞すれば賞金がもらえることです。

 ……と、昭和の中盤ぐらいまでは自信満々に言えたんですけど、もはや文学賞も多様化の時代。とってもおカネは出ませんよ、という文学賞もたくさんできてきました。

 なにしろ、小説や文化に関わる組織は、どこもかしもおカネがなくてピーピー言っている時代です。文藝春秋だって同じこと。直木賞もここらで時代の流れを汲み取ったふりして、賞金なし、にしたっていいんじゃないかと思いますが、とりあえず今週決まる第168回(令和4年/2022年・下半期)では、旧弊どおり賞金が出るようです。ひとり100万円です。

 そうか、文学賞って賞金がもらえるんじゃん。ということを意識しながら、今回候補に挙がった5人のプロフィールを見ると、どの人の履歴にもおカネのことが書いてあることに気づきます。おカネのこと。つまり、これまでいろいろと文学賞をとってきた人たち、ということです。

 文学賞は歴史的な始まりからして、おカネにまつわるイベントです。作品がどうだとか、誰がとりそうかとか、そんなのは些末なことにすぎません。賞を見るときいちばん自然な角度は何なのか。それは「賞はカネである」という視点です。

 なので、今回の直木賞も、おカネの明細で並べてみます。候補者のなかで、誰がいちばん文学賞で稼いできたのか。

■雫井脩介(平成12年/2000年デビュー・22年)

1500万円
平成11年/1999年第4回新潮ミステリー倶楽部賞1000万円
平成16年/2004年度第7回大藪春彦賞500万円

■千早茜(平成21年/2009年デビュー・14年)

550万円
平成20年/2008年第21回小説すばる新人賞200万円
平成21年/2009年第37回泉鏡花文学賞100万円
平成25年/2013年第20回島清恋愛文学賞50万円
令和2年/2020年度第6回渡辺淳一文学賞200万円

■小川哲(平成27年/2015年デビュー・8年)

350万円
平成27年/2015年第3回ハヤカワSFコンテスト100万円
平成29年/2017年度第38回日本SF大賞50万円
平成29年/2017年度第31回山本周五郎賞100万円
令和4年/2022年第13回山田風太郎賞100万円

■一穂ミチ(平成19年/2007年デビュー・16年)

100万円
令和3年/2021年度第43回吉川英治文学新人賞100万円

■凪良ゆう(平成19年/2007年デビュー・16年)

10万円
令和2年/2020年2020年本屋大賞図書カード10万円

 文学賞全体が景気がよくて浮かれていた頃から、景気がわるくて「それでも文学には力がある!」とか宗教じみたことを言いはじめた現在まで、見事に時代相が出ている候補者のラインナップで、さすがは何でもありの直木賞です。

 何つっても、賞金1000万円がゴロゴロしていた、アノ狂乱の時代の文学賞がリストに出てくるんですからね。それをとってデビューした人が今回はじめて候補に挙がるというのも、また直木賞ならでは。時空間がむちゃくちゃです。

 さあ、これら賞金ハンターの猛者たちがつどって、いったい誰が100万円を獲得するのか。

 1月19日(木)夕方~夜には受賞会見が開かれる予定になっています。そこで主催者か受賞者が、札束をビラビラと見せびらかせて、世を炎上させたら面白いな、と思うんですけど、残念ながら受賞式は、選考結果が出てから1か月ほど先のことです。発表の当日はゲンナマを目にすることはできません。せめて、だれか空気を読まない文芸記者が「賞金の使い道は?」と質問してくれることを期待しています。

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