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2017年7月20日 (木)

第157回直木賞(平成29年/2017年上半期)決定の夜に

 今夜もいつもとかわらず、歓喜、失望、興奮の声が、全国各地で上がった……のでしょう、おそらく。

 ちょっともう、ワタクシは直木賞が好きすぎて、一般の状況がわからなくなっていますが、どんな盛り上がり具合でしょうか。手堅いといえばこれほど手堅い授賞はなく、非常に落ち着きのある直木賞となって、個人的には、今晩はおだやかな気分で眠れそうです。おだやかなのがいちばんです。

 と、完全に爺いモードに入るまえに、今回もまた、受賞しなかった4作が、目のまえにあります。決まったあとに、わざわざ受賞しなかったものなど目を向ける気がしない、という人も、いるかもしれませんけど、候補作の歴史こそが、直木賞の歴史。そのリストに名を刻んでくれた、この勇敢な(?)4作品を讃えて、ぜひ後世にまで語り継いでいきたい、という気持ちでいっぱうです。

 いったい宮内悠介さんの、今作のはじけ飛びぶりには、ハラハラドキドキさせられました。あるいは、直木賞のほうが一皮むける絶好のチャンスだったかもしれません。しかし、ああ、宮内さんどこまで飛翔してしまうんだあ……と、直木賞はぽかんと口をあけて、その背中を見送ることしかできず、いよいよ取り残されてしまいそうですけど、あと何度でもこの賞の相手をしてくれそうな、宮内さんの間口の広さに甘えさせてもらって、また次もお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

 この先が楽しみな作家ばかりだ、ということは言わずもがななんですが、佐藤巖太郎さんが、これからどう活躍の姿を見せてくれるのか。『会津執権の栄誉』を読んで、俄然、楽しみになりました。とりあえず最初の候補で、歴史モノに賞をあげることのできない直木賞のクセは、もはや治りそうもないほどの重症です。すみません。ってワタクシが謝っても仕方ないんですけど、こういう、直木賞のイヤなクセを帳消しにするぐらい、巖太郎さんが活躍してくださることを期待するしかありません。どうぞ、直木賞を助けてやってください。

 直木賞はいまキテる勢いのある作家にとってほしい……というのは、某選考委員の口グセですが、「いまキテる勢いのある作家」にあげそこねるのも、また直木賞の伝統です。そんなもの伝統にするなよ、ってツッコみたくなるのを抑えて、木下昌輝さんの候補作、今回は(も)とってもおかしくないんだけどなあ、と嘆きたくなるのも抑えつつ、さすがにそろそろ直木賞騒ぎもイヤになりはじめているかもしれませんが、やはり木下さんにとってもらいたい直木賞。ここは耐え忍んで、いつか木下さんが受賞する日を待ちたいと思います。

 柚木麻子さん。「直木賞っぽい路線」なんてクソくらえ的な、我が道を行くその剛腕ぶりに、もう感服しました。お見事です。降参です。確実に直木賞史に残る作品を書いていただき、これは少なくともワタクシ個人的には、賞の当落よりも重要なことなものですから、ありがとうございました、と御礼を述べる他ありません。直木賞っぽい路線、クソくらえ、です。

          ○

 こういうことが、ちょくちょくあるのが直木賞。とわかっていたつもりでも、佐藤正午さんが候補になった段階で、どういうことなんだよ直木賞!? と年甲斐もなく動揺してしまったワタクシ。恥ずかしいです。動揺している場合じゃありませんね。

 ようやく直木賞が佐藤正午に追いついた、と思って、そんな直木賞の成長ぶりを、うれしく受け止めることにします。

 しかし、荻原浩恩田陸、佐藤正午……。直木賞はどこまでベテラン作家路線を突き進んでいくことになるんだろう。まあ、そこまで深く考えて候補選びしているとは、とうてい思えないので、じきに方向転換する時期もやってくるんでしょうけど、とりあえずなかなか「受賞なし」を出さない最近の直木賞の姿だけは健在で、これで21期連続授賞、となってさらに記録更新。いつ途切れるのか、いつ途切れるのか、とそちらもドキドキしながら、また半年先を待ちたいと思います。

          ○

 今回も、いや今回は確実に芥のほうが先に発表されるものと思っていたら、何だかそちらのほうではバチバチのやり合いがあったそうで、それで時間を食ったのか、受賞会見場への結果発表貼り出しは、両賞同時となりました。

 芥が出てから直木賞の発表まで待たされる、あの息の詰まるような時間を過ごさなくてよかったのは、やはり直木賞ファンとしてはありがたいことでした。

  • ニコニコ生放送……芥:19時24分(前期比+31分) 直:19時24分(前期比+8分)

 正午さんの『月の満ち欠け』、圧倒的な差をつけての受賞だった、とはいえ選考会の全会一致ではなかった様子で、だれがどういう理由で、他に何を推したのか、やはりそっちも気になります。8月発売の『オール讀物』の選評を待つしかありませんが、しかし直木賞っていつまで見てても飽きないよなあ、という思いは変わらず、第158回(平成29年/2017年下半期)を、いまから楽しみにして、つらい(?)日常生活を乗り切りたいと思います。

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