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2017年1月15日 (日)

まもなく平成28年/2016年度の出版界のお祭りなので、5つの小説の順位を予想する。

 今週は、みなさんごぞんじの大きな文学賞イベントがあります。この時期、日本中の小説好きたちが、ほぼ全員そこに注目している、と言ってもいいでしょう。

 なので、通常のブログテーマはひとまずお休み。ここはストレートに、その賞のゆくえを展望するような、予想のハナシでいこうかと思います。

 そうです。1月18日(水)が、いよいよ目前にせまってきました。毎回、数多くの読書家たちがかたずをのんで、その発表の瞬間をドキドキしながら待ち望む、出版界最大のイベント。本屋大賞のノミネート作品発表です。

 すでにネット上では、mmmichyさんをはじめ、いったいどの作品がノミネート作に選ばれるのかと、予想につぐ予想で盛り上がっていますが、それはもう、あらためて紹介するまでもありません。ワタクシのまわりにも、「この日を楽しみに一年を過ごしてきたんだ!」という人が、たくさんいます。もはや世間は、本屋大賞の話題でもちきりです。

 本屋さんたちが、どんな作品を選ぶのか。そして、自分の好きな小説が、どのくらいの順位になるのか。想像するだけで、期待と不安で胸がはちきれそうです!

 ということで、うちのブログでも、本屋大賞の順位を予想してみよう。と思ったんですが、なにしろこっちは、世間の本屋さんほど、たくさん小説を読んでいるわけじゃありません。ふとまわりを見回したところ、いまワタクシの机のうえに、たまたま小説が5冊置いてあったものですから、とりあえず、これらについてだけ、どのくらいの票が入りそうか予想することにしました。

■恩田陸『蜜蜂と遠雷』(平成28年/2016年9月・幻冬舎刊)

予想 1次投票1位→最終3位
過去のランキング(1次投票)→最終
2005年 1位)→1位 『夜のピクニック』
(43位) 『Q&A』
(164位) 『蛇行する川のほとり』
2006年 (48位) 『蒲公英草紙 常野物語』
(55位) 『ネクロポリス』
2007年 19位 『チョコレートコスモス』
(54位) 『中庭の出来事』
2008年 (113位) 『木洩れ日に泳ぐ魚』
2009年 (115位) 『きのうの世界』
(178位) 『不連続の世界』
2010年 (64位) 『ブラザー・サン シスター・ムーン』
(85位) 『訪問者』
2011年 (239位) 『私の家では何も起こらない』
2012年 (89位) 『夢違』
2014年 (291位) 『夜の底は柔らかな幻』
2015年 (243位) 『雪月花黙示録』
2016年 (156位) 『消滅 VANISHING POINT』

 今年度の1位はこれなんだろうなあ。と思いながらも、さんざん迷いました。

 本屋大賞は、何だかんだで、もう14年目です。「この人は、前にも1位になっているし……」と考えて一票をためらうような投票者心理も、そろそろ薄れてきているものと思います。

 だけど、すんなり大賞をとるかと言うと、やはり不安が残ります。なにせ、この作品には、これから2次投票が締め切られるまでのあいだに、他の文学賞をとってしまう可能性がある、という最大の障壁があるからです。

 「すでに別の賞をとって注目されている小説に、重ねて授賞www 本屋大賞、終わったなwww」などと、みんなからガンガン叩かれることが目に見えているのに、票を投じることのできる勇気ある書店員が、いったいどのくらいいるんでしょうか。それを考えると、平和に生きていきたい本屋さんもけっこういると思うので、最終的には、多少順位を落とすのではないか、と思いました。

■森見登美彦『夜行』(平成28年/2016年10月・小学館刊)

予想 1次投票4位→最終4位
過去のランキング(1次投票)→最終
2005年 22位 『太陽の塔』
2006年 (33位) 『四畳半神話大系』
2007年 2位)→2位 『夜は短し歩けよ乙女』
20位 『きつねのはなし』
2008年 3位)→3位 『有頂天家族』
16位 『新釈 走れメロス 他四篇』
2009年 (67位) 『美女と竹林』
2010年 16位 『恋文の技術』
17位 『宵山万華鏡』
(132位) 編『奇想と微笑 太宰治傑作選』
2011年 3位)→3位 『ペンギン・ハイウェイ』
2012年 (105位) 『四畳半王国見聞録』
2014年 9位)→9位 『聖なる怠け者の冒険』
2016年 20位 『有頂天家族 二代目の帰朝』

 これも、上位のランクインは固いですよね。当然かもしれません。

 本屋大賞の前哨戦ともいわれるのが「キノベス!」ですけど、そちらでも着実に4位につけていました(ちなみに『蜜蜂と遠雷』は第3位)。当然、大量の部数がすでに市場に出まわってもいて、逆にこれが上位に挙がらなきゃおかしい、というくらいの評判作です。

 いよいよ森見さん、大賞ウィナーの仲間入りか! と期待しているところですが、そうは単純に着地しそうにない世界観が、この作品の魅力だとも思います。

 「これまでの実績を加味して」とかいう、腐りきった投票行為が許されるような文学賞とは違って、本屋大賞は、ひとつひとつの作品に対する判断と推薦が基本(……ですよね?)。ひきこまれる読者にとっては絶品でも、そうでもない人にとってはそうでもない、という森見作品の長所が存分に発揮された作品と見て、少し遠慮して4位と予想しました。

■須賀しのぶ『また、桜の国で』(平成28年/2016年10月・祥伝社刊)

予想 1次投票19位
過去のランキング(1次投票)
2010年 (72位) 『芙蓉千里』
2011年 (64位) 『神の棘』
2015年 (190位) 『ゲームセットにはまだ早い』
2016年 (35位) 『革命前夜』
(72位) 『紺碧の果てを見よ』
(142位) 『雲は湧き、光あふれて』

 うーん、難しい。

 難しいので、去年の『革命前夜』の得票を参考にしました。そして、それよりは上に行ってもいいじゃないかと、ワタクシの希望も込めてトップ20入り、という予想です。

 祥伝社の本は、これまであまりトップ20に入ったことがなく、平成20年/2008年度(森見さんの『新釈 走れメロス 他四篇』)から8年も出ていない、というのが気がかりではありますが、そういうこととは関係なく、書店員さんはしっかりこの作品を評価して、投票しているはずだ。投票していてほしい。と信じたいです。

           ○

■垣根涼介『室町無頼』(平成28年/2016年8月・新潮社刊)

予想 1次投票23位
過去のランキング(1次投票)
2004年 (39位) 『ワイルド・ソウル』
2007年 (123位) 『ゆりかごで眠れ』
(163位) 『真夏の島に咲く花は』
2012年 (89位) 『月は怒らない』
(247位) 『人生教習所』
2013年 (216位) 『勝ち逃げの女王――君たちに明日はない4』
2014年 12位 『光秀の定理(レンマ)』

 ワタクシは本屋さんでも何でもないので、くわしくは知らないんですが、現場では「本屋大賞あるある」みたいなものが囁かれているそうです。

 ひとつ聞いたなかでは、「本屋大賞では歴史・時代小説は上に行きづらい。ただし、一部の作家をのぞく。」という「あるある」があるんだとか。

 『室町無頼』は歴史小説ですが、垣根さんの場合、その「一部の作家」に入っているような雰囲気がありますよね。今回も割合、健闘するんじゃないでしょうか。

■冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』(平成28年/2016年10月・文藝春秋刊)

予想 1次投票78位
過去のランキング(1次投票)→最終
2007年 (123位) 『マルドゥック・ヴェロシティ』
2009年 (216位) 『スプライトシュピーゲルIV』
2010年 6位)→1位 『天地明察』
2011年 (138位) 『マルドゥック・スクランブル[改訂新版]』
2013年 5位)→11位 『光圀伝』
(216位) 『もらい泣き』
2014年 17位 『はなとゆめ』
2015年 (162位) 共著『決戦!関ケ原』

 「例外的な一部の作家」といえば、何といっても冲方さんです。そして、その効力は「ミステリー」枠に行っても健在なのかどうなのか。気になります。

 本屋大賞は、10代20代から50代60代まで、幅広い世代に投票のチャンスがあり、また実際、それらのデータの集積であることがひとつの売りですので(……たぶん)、なかなかオッサンが入っていきづらい舞台設定や人物造型、物語の展開などでも、きちんと好意的に評価され、1次投票リストに名が残る、というよさがあります。

 『十二人の~』は、もっと票を集めてもおかしくないし、逆に、一人二人ぐらいしか票を入れなかったとしても不思議ではない、そうとう動向の予想しづらい部類の作品だと思うんですが、どっちに振れるか、見当がつきません。

           ○

 無作為に5つの作品を挙げましたけど、どれも上位をうかがえそうなものばかり。いやあ、ほんとに、今週の水曜日が待ち遠しいですね。

 かつては、ノミネート作発表ぐらいでは大して盛り上がらなかった、とも聞きます。とくに1年目の平成16年/2004年度などは、ちょうどノミネートの発表日が、どこかの出版社がやっている文学賞の決定と重なり、しかも、そっちで金原ひとみ・綿矢りさという、20歳前後の若い女性二人が受賞してしまったために、メディアや、われわれ一般読者の興味は、ほとんどそちらに向いてしまいました。

 ワタクシも、そのころ本屋大賞のノミネートなど、気にもしていなかったひとりです。反省したいと思います。

 それで、今週発表されるのは、平成28年/2016年度の、すでに投票の終了した1次投票10位までの作品名・作家名だけ。11位以下も含めた順位がわかるのは、もっと先の、4月です。なので、上に掲げたシガない予想が当たっているか外れているかは、すぐはわからないんですが、ともかく今週から本屋大賞のお祭りがはじまります。みんな春まで盛り上がっていきましょう!

 ……と、それはいいとして、翌日の19日(木)、これに比べれば格段に注目度の低い文学賞が、決まるとか決まらないとか、ウワサされています。まさか本屋大賞に対抗しようとでもいうのでしょうか。ネット上でも、あまり話題にしている人がいないので、よくわかりませんね。まあ、もしも覚えていたら、本屋大賞の余勢で、そっちの賞のこともちょっと気にかける、という程度で十分なのかもしれません。

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