第134回直木賞『容疑者Xの献身』以降、第144回『漂砂のうたう』『月と蟹』までの受賞作単行本部数
第156回(平成28年/2016年・下半期)
第134回(平成17年/2005年・下半期)
第135回(平成18年/2006年・上半期)
第136回(平成18年/2006年・下半期)
第137回(平成19年/2007年・上半期)
第138回(平成19年/2007年・下半期)
第139回(平成20年/2008年・上半期)
第140回(平成20年/2008年・下半期)
第141回(平成21年/2009年・上半期)
第142回(平成21年/2009年・下半期)
第143回(平成22年/2010年・上半期)
第144回(平成22年/2010年・下半期)
(以上すべて受賞作)
先週1月19日に第156回の結果発表がありましたが、直木賞はこれからが本番(?)。授賞式があり、選評が発表され、また増刷分の単行本が全国の書店に流通することになって、さてどれほどの売り上げを叩き出すか……というお楽しみが待っています。
さっそく芥川賞のほうは、読売新聞調査研究本部の渡辺覚さんが、大手出版社の文芸編集者の、「10万部超えは確実」だという予想を紹介しています(「祝・芥川賞 山下澄人「しんせかい」を読み解く」より)。
受賞が決まったばっかりなのに、どれぐらい売れるかという下世話な話題でオチをつける、かなり末期的な芥川賞脳を披露してくれていて心強いです。ぜひ、『蜜蜂と遠雷』も読み解いていただければと願っています。
とまあ、『蜜蜂~』ですが、こちらこそ10万部は固いところ。いや、この圧倒的な評判のよさから、20万部は超えるのが自然かもしれず、4月の本屋大賞次第では、『ホテルローヤル』以来の50万部突破も夢じゃない。さらに映画化とかの話題が続けば、『鉄道員』を抜いて、直木賞史上トップ1に立てるかも!?
(とりあえず、受賞後一発目の重版で、27万部だそうです。)
下世話な夢は広がるばかりですね。
それで、うちのブログでは「だいたい直木賞受賞作はどのくらい売れるのか」というハナシを半年以上続けているんですが、前回155回の直後には、145回~155回の分を調べてみました。今週は、そのまえのだいたい5年分について取り上げて、「最近10年の受賞作部数の動向リスト」を完成させておきたいと思います。
各部数の典拠は、
- 『東京新聞』平成23年/2011年2月22日夕刊…木内昇『漂砂のうたう』、道尾秀介『月と蟹』
- 『2011出版指標 年報』平成23年/2011年4月…佐々木譲『廃墟に乞う』、白石一文『ほかならぬ人へ』、中島京子『小さいおうち』
- 『2010出版指標 年報』平成22年/2010年4月…天童荒太『悼む人』、山本兼一『利休にたずねよ』、北村薫『鷺と雪』
- 『朝日新聞』平成22年/2010年11月24日…井上荒野『切羽へ』、森絵都『風に舞いあがるビニールシート』、三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』、東野圭吾『容疑者Xの献身』
- 『2009出版指標 年報』平成21年/2009年4月…桜庭一樹『私の男』
- 『2008出版指標 年報』平成20年/2008年4月…松井今朝子『吉原手引草』
といったところをベースにしています。
また、『悼む人』の初版部数については、このブログのコメント欄で教えていただいた『創』のバックナンバーに当たり、当時、文春の第一出版局長だった庄野音比古さんの談話、
「(引用者注:平成20年/2008年の)後半は東野(引用者注:圭吾)さんの本もそうですが、天童荒太さんの『悼む人』も初版10万部というスタートだし、1月には村山由佳さんの『ダブるファンタジー』、小川洋子さんの長編も出ます」(『創』平成21年/2009年2月号 篠田博之「出版社の徹底研究 東野圭吾旋風で文藝春秋書籍部門の勢い」より)
を採りました。
○
ほんとうに参考までに、という感じで、同じ時期の芥川賞のほうも、部数を上げてみます。
こちらは、
- 『2012出版指標 年報』平成24年/2012年4月…朝吹真理子「きことわ」、西村賢太「苦役列車」
- 『2011出版指標 年報』平成23年/2011年4月…赤染晶子「乙女の密告」
- 『2010出版指標 年報』平成22年/2010年4月…磯崎憲一郎「終の住処」、津村記久子「ポトスライムの舟」
- 『2009出版指標 年報』平成21年/2009年4月…楊逸「時が滲む朝」、川上未映子「乳と卵」
- 『2008出版指標 年報』平成20年/2008年4月…諏訪哲史「アサッテの人」、青山七恵「ひとり日和」
- 『朝日新聞』平成18年/2006年7月15日…絲山秋子「沖で待つ」
と、ほぼ『出版指標 年報』の数字に頼ってしまいました。
これで、(不明なものが混じっていて気持ち悪いんですけど)ここ10年間の直木賞と芥川賞の受賞作が、受賞効果でどれくらい売れてきたか、挙げたことになるんですが、わずか10年。とはいえ、両賞の歴史80余年の、8分の1の長さがありますから、ある程度の動き、傾向、興亡は見えると思います。
……うーん、見えるんでしょうか。
とにかく直・芥賞と聞くだけで戦闘意欲がふるい立つ、「話題になった本」嫌いの人ならば、「10万部いくかいかないか、程度のところでウロウロしているんなんて、往年の権威もなくなったもんだな。売れてるのは、受賞者のキャラが立っているとか、映画化されたとか、そんなんばっかり」と、おなじみのテンプレ批判を繰り出すかもしれません。
逆に、出版界が市場として存続することを願う、ポジティブなことを言いつづける類いの人ならば、「この出版不況の時代に、確実に5万部~10万部売れるなんて、まだまだ直・芥賞も捨てたもんじゃないな。しかもここ1~2年は上昇の兆しもあるし、まだまだ小説の力は衰えていないんだ! これからもこの両賞には、出版界を牽引していってもらわなきゃ」と、これまた、おなじみのテンプレ擁護で、イイ人ぶるかもしれません。
正直、直木賞と芥川賞の部数推移をもとに、客観的な結論など導きだせるものなのか。こんなものに、(感覚や、こじつけではない)傾向なんて存在するのか。……調べれば調べるほど懐疑的になっていく、というのがいまのワタクシの実感です。
ただ、この程度ではまだ結論づけるのは早すぎる、っていうのはたしかでしょう。直木賞の場合は、ただ歴史を追うだけで楽しいですしね。もうちょっと調べていきたいと思います。
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