第154回直木賞(平成27年/2015年下半期)決定の夜に
どうですか直木賞。思い返して、直木賞が(芥川賞とは別に)盛り上がったことなど、いったいいつまでさかのぼらなきゃいけないんだ。って感じの、順当で、誰もが予想しそうな、当然感あふれる、サラーッとした受賞風景。
「今回の直木賞、全然話題にならなかったねー」などと、おなじみのフレーズが街を飛び交う気配が、すでに濃厚なわけですが、要するに、こんなものを毎回絶えず気にかけつづけているのは、完全な変人だろうと思います。変人で何が悪い。今回もやっぱり、結果が出るまで存分に楽しみましたよ、ワタクシは。話題になるかならないかは、知ったこっちゃありません。
今回は候補ラインナップが、ひとりを除いてみんな初候補、というなかなか特徴的な布陣でしたので、直木賞受賞史的には妥当なのかもしれません。でもまあ、いずれ受賞するかもしれない作家の方々が、ぞくぞくと現われてきてくれて、ただ単純に、小説好き読者のひとりとしてうれしいです。
直木賞は、かなり偏屈で理解しがたい選考基準があるらしいです。なので『羊と鋼の森』のような、多くの人に愛される小説がとれなくたって、ワタクシは悲しくなんかありません。宮下奈都さんには、これまでどおりひきつづき、真摯に小説を愛する読者たちを導く女王……というか女神のような存在として君臨していってほしいと願います。
梶よう子さんが『ヨイ豊』の、とくに後半で見せた怒濤のごとき熱量に、圧倒されました。参りました。今度はまた、梶さんのおチャメさやユーモアなんぞを、ふんだんにまぶしたような、楽しい小説を書いていってほしいなあ。それじゃ直木賞向きじゃないかもしれませんけど、いいんじゃないでしょうか、直木賞なんかとらなくたって。
『孤狼の血』こそ、今回の候補のなかでピカイチのエンタメ性、人物も展開も仕掛けも、美しいまでにバランスのとれた小説だなあと読みました。「面白いだけじゃ賞はあげられない」などとほざくどこかの賞のことは、このさい放っておきましょう。柚月裕子さんには、日本のエンタメ小説界をひっぱる存在になる、明るい未来しか見えませんよ。
わずか二冊目、しかも初長篇で、こんなドエラいもの書いちゃって、深緑野分さん、だいじょうぶなのか!? と、勝手に不安になるとともに、こういう作品、こういう作家に、直木賞はあげてほしかった……。きっとのびしろは無限大。次、いったいどんなもの書くんだろう、という先の見えない作家で、いつまでもありつづけてください。
○
青山文平さんの受賞記者会見、最初は朴訥でぼそぼそしゃべる方なのかなあ、と思っていましたが、もうアノ熱い語り口。「(受賞するしないにかかわらず)候補になったことで、あと三年は食えると思った」の言葉が印象的でした。注目どころは「受賞」ではなく、候補になることの重み。ワタクシもあんまり直木賞の受賞そのものには興味がないんで、我が意を得たり! と思ったことでした。
ちなみに青山さんは、候補と決まって以降は、(あまり気にしないようにと)ネットとかそういう情報は見ないようにしていた、とのことで、ええ、候補に上がっていようがいまいが、基本、直木賞関連のサイトは、大したことも書いていないので、見ないでもいいと思います。
○
見ないでもいいようなことを、生活の中心にしてサイトを運営している変人なものですから、今回も、帝国ホテルの受賞者記者会見場に行ってきました。仕事でもなければ、知り合いの作家が候補になっているわけでもない、単なる趣味でわざわざあんなところに行くのは、もしワタクシが他人だったら、キモい野郎扱いするでしょうけど、楽しいんだからしかたありません。
ええと、今回は、もうひとつの賞はどうだったのかな。あんま関心がわかないんで、よく知りませんけど、本命視されていた人と、カメラ映えする芸能畑の人がとったらしいので、喜んでいる人も多いんじゃないでしょうか。よくわからないので、これ以上は触れません。
現場では、ただ「直木賞の結果を待っている」というあの空気感にボーッとのぼせてしまい、たいしたツイートはできなかったんですが、twilogに残しておきました。
芥川賞の発表があってから、直木賞を待つまでのアノ時間が、また何とも言えずイライラするんですよね。待ってりゃそのうちかならず発表されると決まっているのに、イライラするのも馬鹿バカしいかぎりです。でもまあ、その馬鹿バカしさを含めての直木賞、ってことで。以下、発表貼り出しの時間です。
- ニコニコ生放送……芥:19時03分(前期比-22分) 直:19時42分(前期比+6分)
ニコ生の視聴者数、3万6000? 前回は、まあ比較するのも無意味なぐらいのハデハデ回だったので、いいんですが、それまでと比べても、けっこう減りましたね。さすがジミジミ回の、一般的な関心のなさは、健在だなー。どっちにしたって直木賞は、もうひとつの賞の盛り上がり次第、ってところがありますので、ジタバタしてもしかたなく、ハデだろうがジミだろうが、いつも面白い直木賞。ああ、早く7月が来ないかなあ、と指折りかぞえて待っています。
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