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2015年1月16日 (金)

第152回直木賞(平成26年/2014年下半期)決定の夜に

 芥川賞は小谷野さんにとってほしかった……。と第144回のときも言ったと思いますけど、芥川賞はさておき、第152回直木賞(平成26年/2014年下半期)が1月15日夜、決定しました。候補作すべてが帯にみじかしナントヤラで、けっきょく受賞作なしに落ち着く、みたいな消極的な回にならなくて、とりあえずホッとしています。

 と、「いったいおまえどの立場からもの言っているんだ」という感想を申しましたところで、直木賞ファンとはつまるところ、直木賞候補作群のファンです。今回、いろいろと妄想、夢想を一読者に与えてくれた4つの候補作には、なにはさておいても感謝しなければなりません。いつもどおり。

 中央公論新人賞とって、そのあとが続かなくて、しばらく経ってから再び登場、そして直木賞、……って、おお、色川武大の再来か!? と夢想をひろげさせてくれた青山文平さん。「単に昔のことを書いた時代小説」みたいな世界からすでに大きく飛翔しているので、これからもガシガシ重くて深い、でも読みやすい小説を、きっと読ませてくださるでしょう。うれしいです。あ、そういえば色川さんも、初回の候補のときは、何だかんだケチつけられて落とされましたしね。ワタクシの夢想は、まだ終わってはいません。

 夢想といえば『あなたの本当の人生は』。大島真寿美さんの筋運び、気合い、そして小道具(というかそっちがメイン?)の使い方には、酔わされました。何が何だか、じっさいの世界のことを書いていないようでいて、現実に通じているヘンテコリンな(←褒め言葉)お話。他の文学賞が捕まえきれなかった大島さんの独特な世界に、ボンクラ直木賞ごときが太刀打ちできるわけもなかったのですが、直木賞にまたチャンスを与えてやってくれるとありがたいです。いつかは直木賞も気づく日が……いや、いつまでも懲りないのが直木賞ですので、直木賞が大島さんに追いつける日がくるのかどうか、不安ではありますけど。

 そりゃ期待しました。夢みました。『宇喜多の捨て嫁』なんて読まされたら、まさかのデビュー作に、しかも時代小説に厳しいはずの直木賞だって、さすがに賞を与えるんじゃないかと。ここまで胸おどらせてくれて、木下昌輝さんに「ありがとう」以外の声をかける直木賞ファンが果たしているのでしょうか。まったく、一発目でどーんと授賞していれば直木賞、カッコよかったのになあ。ほんと直木賞ってダメなやつだなあ。悲しいですよ、ワタクシは。

 ひとり「直木賞vs.本屋大賞」こと万城目学さんのサイコロが、これで、またまた本屋大賞側に投げ返されました。なにしろ「直木賞とは違って、うんぬんかんぬん」という評価を得てのし上がった本屋大賞のことです。今度こそ、万城目さんに賞をあげて、「本屋大賞エライ」「やっぱり直木賞、信用できないよね」の声を全国津々浦々に巻き起こしてくれることでしょう。これ、ひがみでも何でもなく、直木賞ファンはそんな展開を心の底から夢みています(ワタクシだけか?)。直木賞は基本、変な賞だから、べつにいいのです。書店員の方々、ぜひよろしくお願いいたします。

          ○

 西加奈子さんの心あらわれるような記者会見、あなた、聴きましたか? 直木賞がどうだとか、文学に興味はないが文学賞に興味があるとか、そんなこと言っている自分が恥ずかしくなりますよね(それでもワタクシは直木賞ファン、やめませんけど)。これでさらに(いままでも相当でしたが、さらに一層)スポットライトを浴びて、西さんの作家人生がますます充実したものになっていくことは、もはや夢想・妄想するまでもありません。

 直木賞は文藝春秋が有利、文春のものばっかりが受賞する出来レース、などという風評がこれで少しは収まるのか、どうなのか、よくわかりませんけど、きっと直木賞に対する妄想的な批判は、やむことはないんでしょう。そんなの全然気にしなそうな、自分の背に一本スジの通っていそうな方が、今期も受賞者になってくれたことに、オジサンはホッとしています(←おまえどの立場からもの言っているんだ、パート2)。

          ○

 今回ははじめて、受賞者の記者会見が行われる帝国ホテルに行ってきました。誰かから何を頼まれたわけでもなし、事前にきいた風のウワサで、関係者以外は受付で門前払いをくらわされる、とも言われていたので、受付の人が目を放したすきにこっそりと……なわけはなくて、ある新聞記者の方にお願いして、いっしょに付いてきていただき、受付で名刺を渡して、堂々と(?)入場しました。

 まあ、とはいえ、こちとら完全な観光客気分。場内をウロウロし、奥のほうの仕切りもない開けたスペースでやっているニコニコ生放送の解説を、目の前でじかに拝見・拝聴しながら待っていたら、あっという間の受賞者発表。そして記者会見でした。さすがに毎回毎回足を運んでいるような報道関係者にとっては、変わり映えのしない飽き飽きした場なんでしょうが、こちらははじめてでしたので新鮮で、しかもそこにいる人の全員が直木賞のためにわざわざ集まっているという、楽園のような空間でした。

 とりあえず現場でいくつかツイートしておきましたので、twilogへのリンク貼っておきます

 受賞者名が貼り出された時間は、以下のような感じです。

  • ニコニコ生放送……芥:19時04分(前期比-25分) 直:19時33分(前期比+4分)

 でも例によって例のごとく、芥川賞のほうが先に発表され、直木賞まで少し時間がありました。会見場に集まっている記者、カメラマンにしてみれば、なにグズグズしているんだ直木賞、早く決めろよ、こっちは待っているんだぞ、とイライラしないはずはなく、手持無沙汰の数十分間があり、ああ、これだから直木賞は(芥川賞と比べて)文芸ジャーナリズムに嫌われるんだなー、と実感新たにしました(ほとんど被害妄想)。

 と、終わったばかりで早くも心は第153回(平成27年/2015年上半期)へと飛びそうになるのを抑えつつ、週明けの「文学賞メッタ斬り!結果編」、来月の『オール讀物』での選評発表、そして春に行われる各文学賞のときにさんざん(比較対象として)直木賞が叩かれる状況を、楽しみにしています。

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