第8期のテーマは「批判」です。直木賞に対して投げつけられてきた批判の数々――つまり、それがなくては「直木賞」たり得ない古今の発言を取り上げていきます。
データベースサイト「直木賞のすべて」のオマケとして始めたブログ「余聞と余分」ですが、この5月で8年目に突入しました。
こないだの第150回は記念回でしたので別だったといえ、通常、直木賞のことは1月・2月か、7月・8月ぐらいしかニュースになりません。ワタクシは、四六時中直木賞に触れていたい病気の末期患者なので、どんな季節でも直木賞のことばかり書きつづけるブログがあったっていいじゃないか(あってほしい)、と思い、やっています。
反省点もあります。あまりに直木賞を取り巻くあれこれが面白すぎて、ついのめり込みすぎ、ほとんど毎日、このブログを書くために生活しているような時期もありました。途中、芥川賞の歴史を本にする、などという悪魔しかやらないような罪を犯して、本来、直木賞のために割くべき時間をふんだんに失ったときもあり、あるいはこういうブログを長年続けたおかげで、直木賞の歴史を本にするときには、苦もなく(……ってほどでもないけれど)原稿をつくることができた反面、ずっと、なぜかブログをおろそかにしてはいけない、と思い込み、空いた時間をすべて直木賞の本とブログに注ぎ込んだ結果、完全なる生活破綻の道を突き進んでしまいました。
サブであるはずのそういった業務にかかずらっているあいだ、本体の「直木賞のすべて」はメンテナンスするのが精一杯でした。いかんいかん。ということで現在は、Twitterなどもお休みして、本体サイトへの情報充実のために動いており、全然、生活破綻から脱け出すところには結びついていないんですけど、まっとうな直木賞オタクを目指したいと思っています。
で、8年目の「余聞と余分」のテーマなんですが、余聞であり余分(にすぎない)、っつう原点に立ち返りつつ、データベースサイトではなかなか表現しづらい事象に光を当てることにしました。直木賞が創設以来さまざまに受けてきた(いまも受け続けている)内部・外部からの批判・非難・悪罵・雑言について、です。
うちのブログを読んでくださった人はおわかりかと思いますが、ワタクシは直木賞のファンです。具体的に直木賞の何に対するファンかといえば、直木賞全体であり、その中核にあるのは「直木賞の選考・存在に対して行われてきた、あらゆる人たちの発言」が大好きだ、ということです。そんなの当然でしょと思って、はしょって「直木賞ファンです」「直木賞が好きです」などと言っていると、どうやらそう受け取ってくれない人がけっこういる、ってことを、二つの本を出して実感したもので、改めて明言しておきます。
なかでも、直木賞を糾弾するような悪口が、大好きです。なにしろ面白いからです。
何が面白いかといえば、鋭い指摘のなかに、テキトーなイメージしか持たずマト外れに声高に批判している、そういう文章がまぎれている確率が異常に高く、その愚かさが堪らなくキュートなんですよね。芥川賞の歴史や、直木賞の歴史を本にする際を含め、いろいろと調べるなかで、そんな文章を山ほど見てきました。やむを得ず、本では紹介できなかったものもたくさんあるので、8年目は、それらのキュートな悪口を取り上げていきたいと思います。
「直木賞に対する批判の系譜(あるいは、とばっちりの歴史)」です。……とばっちり、というのは、ほんとうは芥川賞に対して言いたい批判が、なぜか直木賞のほうにも向けられる、という構造が、そういう批判文のスタンダードと化しているからです。
ずいぶんと昔の文献も紹介すると思いますが、ちょっとネットサーフィンしてみれば、平成26年/2014年のいま、似たような悪口がいまだに数多くやりとりされている場面に出会えるに違いありません。どうですか、この面白さ! 何と直木賞(を形成する周辺事項)は魅力的なんだ! ……ワタクシは正直、生涯、直木賞ファンをやめることができそうにありません。
| 固定リンク
« 佐佐木茂索〔選考委員〕VS 『新喜劇』同人〔候補者〕…大衆文芸の場合、一作二作では作家の将来を見抜けない、と言い張る。 | トップページ | 「受賞者のその後は死屍累々」…『THEMIS』平成20年/2008年9月号「芥川賞の社会現象化とはしゃぐマスコミを叱る」加藤英太郎 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 第18期のテーマは「別の名前」。直木賞にかかわる作家たちが、別の名義でどんな活動をしていたのかを見てみます。(2024.05.26)
- 第17期のテーマは「親」。彼らがいたから直木賞の受賞者や候補者がいる。とても大事な人たちです。(2023.06.04)
- 第16期のテーマは「お金(カネ)」。おカネによって成り立つ直木賞の背景を、今一度確認していきます。(2022.06.05)
- 第15期のテーマは「文芸記者」。直木賞の延命を外から支えてきた新聞社の記者たちに光を当てます。(2021.06.06)
- 第14期のテーマは「小説教室」。文学史のなかでは傍流中の傍流、つまり直木賞のお仲間といってもいい事業についてです。(2020.06.07)
コメント
直木賞作家作品集 選定者などは 入れ替えにしてくださいな。 野坂昭如作品集のいらい 直木賞らしさが なくなっていますね。平成化などではない。万年練りかですな。
投稿: 竹村祐一 | 2014年6月 4日 (水) 08時51分