第150回直木賞(平成25年/2013年下半期)決定の夜に
誰ですか。第150回記念だと煽っていた割りには、おばさん二人かよ、などと、憎まれ口を叩いている人は。そういう不平を言うのは、いまではありません。あなたが日本人なら、来週1月21日に本屋大賞のノミネート作品が発表されたとき、「やっぱ本屋大賞スゲー、それに比べて直木賞は……」と言わなくちゃいけない責務があるのですから、そのときまでとっといてください。
……冗談はさておきまして、1月16日夜(もはや日が変わって1月17日)。いま直木賞のハナシをしないで、いつするというのですか(うちのブログでは毎週してますけど)。第150回(平成25年/2013年・下半期)選考会が終わりました。日本文学振興会が懸命に働いたおかげで、今回は6つの候補作を、ずいぶん早い段階から読み進めることができたので、1か月近くも直木賞をオカズにして充実した生活を送ることができました。
直木賞っつうのは、いまも昔も、いつの時代であっても、候補作品が主役の賞です。この真理を改めて突きつけられたとき、やはり今回も、候補作すべてを思い起こさなければ、第150回の夜を締めくくることなどできません。
「時代作家・歴史作家にとっては、直木賞で何度落選したかが勲章になる」……などと言ったのは、村上元三さんでしたっけ? いや池波正太郎さんかな? 覚えていませんが、にしても、ですよ。伊東潤さんへの授賞を延期するとは、直木賞も変らないよなあ。『王になろうとした男』に横溢する人間たちの哀しさ、それでいて暗い話に終わらせない力強さ、読者に対するサービス精神。まったく、感服しました、以外の言葉が見つかりません。今日も直木賞が、いかに至らぬ賞であるかが露呈されてしまったわけですが、ぜひ伊東さんには、授賞の日まで直木賞とお付き合いいただきたいと願っています。
もはや千早茜さんの行く手には、何の曇りもないので、そこに今回、直木賞がからめなかったことは、直木賞としては残念なことでした。ほんとはねー、直木賞も千早さんみたく、ググーッと上り調子の人に、ささっと一回目で、しかもどちらも初候補・朝井まかてとの同時授賞、とか、そのくらいの腰の軽さがあればいいんですけどねー。なかなか、厄介な賞なものですからねー。ここはひとつ、老いた文学賞を哀れと思って、気にせず先をお進みください。
いつもいつも万城目学さんには、直木賞を助けてもらってありがとうございます。アノ映画化された、アノテレビドラマ化された、人気若手作家が候補に~、みたいなかたちで注目が直木賞にそそがれるものですから、困ったときのマキメ頼み、今回も万城目さんの名声を借りてしまいました。「もう直木賞はいらない」などと言われるのじゃないか、と毎回ヒヤヒヤですが、これも手助け・人助けだと思って、またチャンスがありましたら、よろしくお願いいたします。
ほんとに怖いなあ柚木麻子さんって方は。『伊藤くん A to E』でサラッと直木賞とってっちゃうのかと思いましたよ。油断のならない方だ。柚木さんはやっぱ、「え? このヘンテコリンな作品が直木賞!?」みたいなサプライズを起こせる逸材だと、勝手に思っているもので、半年に一度だけ直木賞に注目する日本中の健全な人びとの、度肝を抜かすような作品で、直木賞の場をむちゃくちゃに荒らしてほしい! ワタクシ、いまから腰ぬかして椅子から転げ落ちる練習を始めておきます。
○
装丁やらオビやら評判やらで、『恋歌』っててっきり“しっとり系”の小説かと思っていたワタクシをお許しください。全然そんなんじゃないじゃん。朝井まかてさん、御見それいたしました。惚れましたよ、ワタクシは(なにしろワタクシ、北川荘平ファンなので、大阪文学学校と聞くだけで、応援したくなる、っていう思いもありつつ)。朝井さんにはこれからも、多少強引でも、枠から外れてもいいので、ガンガン趣向と工夫を凝らしたお話、読ませてもらいたいです。「直木賞をとったからどうだ」とか気にせずに。
受賞しても変わることはないでしょう、といえば、おそらく姫野カオルコさんは、まず変わらないでしょう。トレーニングウエアに身を包んで記者会見を受けるアノ感じ、エッセイなどで知る姫野さんイメージそのままで、何だかホッとしました。受賞されたあの姿を見て、泣き出さない直木賞ファンなど、いるのでしょうか。ワタクシはいまから泣きます。泣きながら寝に入ります。
○
就寝前に、あと少しだけ。
「直木賞・芥川賞は女性3人の受賞、時代が変わったね」などと、いったい何十年前の新聞記事の引き写しだよ、といった感想がぽんぽん出てくるこの雰囲気に、ワタクシはいま心地よさを感じています。いつまで経っても変わらぬ周辺の騒がしさ。これこそ、やはり直木賞の魅力です。どんどんイジッてやってください。
今回は、衝撃的に芥川賞の決定発表が遅かった、発表時刻。ニコ生での「貼りだし」時刻はこんな感じでした。
- ニコニコ生放送……芥:19時40分(前期比+50分) 直:19時12分(前期比+9分)
第150回記念はまだまだ終わらない。日本文学振興会と文藝春秋が、まだまだいろいろと準備してくれているらしいので、本屋大賞の華やかさのかげで、こちらも直木賞、ひきつづき楽しんでいきたいと思います。
| 固定リンク
« 第150回直木賞(平成25年/2013年下半期)直前集中講座 選考委員になるための5つのポイント | トップページ | 村上元三〔選考委員〕VS 景山民夫〔候補者〕…「直木賞とSF」の歴史に深く関わりつづけたSFファン(自称)。 »
「ニュース」カテゴリの記事
- 第171回直木賞(令和6年/2024年上半期)決定の夜に(2024.07.17)
- 第170回直木賞(令和5年/2023年下半期)決定の夜に(2024.01.17)
- 第169回直木賞(令和5年/2023年上半期)決定の夜に(2023.07.19)
- 第168回直木賞(令和4年/2022年下半期)決定の夜に(2023.01.19)
- 第167回直木賞(令和4年/2022年上半期)決定の夜に(2022.07.20)
コメント