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2012年7月17日 (火)

第147回直木賞(平成24年/2012年上半期)決定の夜に

 7月17日、決まらないわけがないのです。第147回(平成24年/2012年・上半期)直木賞が決まってしまいました。

 今回は、上位の二作品『鍵のない夢を見る』と『楽園のカンヴァス』がかなり接近した票だったそうです。山周賞に続いて二度はさすがに負けないわよ!の、頼もしい受賞者が誕生して、ホッとしました。……と言いつつ、結局は直木賞オタクなんで、毎回受賞者が決まれば、なんだかんだ勝手にホッとしているんですけど。

 そうだ。ひと息ついている場合じゃありませんでした。まずは、直木賞候補の打診をイヤがらずに受けて、日本の片隅でほそぼそ生きている一人の直木賞オタクをワクワクさせてくれた、4人の方にお礼を申し上げなければなりません。

 直木賞をとらずとも、『楽園のカンヴァス』はまだまだ読者層を広げていくんでしょうね。原田マハさんの「情熱」に、ワタクシも圧倒された口です。うちのサイトで原田さんの近年の著作一覧をまとめていて、その旺盛な執筆量にびっくりしてしまいました。きっと今後も引く手あまた、でしょうが、ゆっくりじっくりと、アートの素晴らしさ、また教えてください。

 宮内悠介さんが直木賞とったら爽快だよなあ、とニヤニヤする体験が何日間もできて、幸せな時間でした。ほんとに勝手なハナシですが、じつは直木賞オタクにとっては、この体験がこたえられないんですよねえ。直木賞をとらなくても何ひとつ影響なく活躍している先輩作家がこれだけいますので、宮内さんもきっとその一人になるんだろうなあ。……って、アレ? 今後もずっと受賞できないかのようなこと言って、すみません。

 今日もお仕事お疲れさまです。完全に〈直木賞〉の側のほうが食われちゃいましたね、朝井リョウさんには。だいたいワタクシは、すでに話題作を出していて、しかも候補になったこと自体がニュースになる、ってことはその作家のほうが直木賞を超えた存在である、と思うので、ああ、直木賞、朝井さんに負けてるなあ、と思わされたことでした。直木賞の気持ちを代弁させてもらいますと、「また、お手合わせお願いします」。

 貫井徳郎さん。貫井さあん! 『新月譚』、ワタクシの心には突き刺さりましたよ。直木賞には何の興味もない圧倒的多数の読者たちにも支持されつつ、ワタクシのような直木賞オタクまで喜ばせるなんて、もう。何ちゅうテクニシャン(←ベテラン作家に失礼なこと申しました)。受賞しようがしまいが、この作品は直木賞史に残ることは確定しているわけですので、大切に語り継いでいきたいと思います。きっと何十年後かに現れる直木賞オタクも、これ読んで、貫井さんのことが好きになりますよお。

          ○

 お若いのに安定感ありまくりで、「辻村深月、直木賞受賞」と言われて、どこにも不自然さが見当らないという。過去2回(第142回第145回)のときに書いた自分自身のコメントを見返してみて、ああ、今回だめだったら、もう書くことがないネタ切れ状態だったことに気づきました。その点でも今回の受賞で、ホッとひと息。

 ……というのは冗談ですが、『鍵のない夢を見る』では「不穏なツジムラ」の姿を見せてくれて、グッときました。うまい。うまいっすねえ辻村さん。行く手には、「直木賞受賞者だととる確率が上がる」数々の文学賞が待っています。心あたたかなファンたちもたくさんいるようですし、どうかおからだに気をつけて、ぐいぐいとエンタメ小説界を牽引していってやってください。

 おそらく作品の映像化もこれから続々と……って、あ。この話題は余計でしたね。失礼をば。

          ○

 「記者会見で誰か何かヤラかしてくれないとつまらない」などというのは、基本、芥川賞ファン(か、騒動ファン)の世界のことでしょう。直木賞オタクにとっては、じゅうぶん楽しい回でした。

 通例どおり、うちのブログでは、今回の直木賞(と芥川賞)が発表された時刻を記録しておきます。

  • ニコニコ生放送……芥:18時47分 直:19時23分
  • 日本文学振興会(主催者)……芥:18時47分 直:19時23分
  • 読売新聞……芥:18時52分 直:19時28分
  • 朝日新聞……芥直:19時33分
  • 毎日新聞……芥直:19時46分

 ところでニコ生の放送って何をもって決まるのか、とんと疎いんですけど、山本周五郎賞・三島由紀夫賞の記者会見ってやめちゃったんでしょうか。がんばれ、新潮文芸振興会!

 と、なぜか「直木賞決定の夜」なのに、山周賞にエールを送って終わる、というかたちになってしまいました。あ、そういえばこれで辻村さん、山周賞の芽はなくなるのかあ。いや、新潮文芸振興会が自分で決めたよくわからない暗黙のルールを取っぱらえば、辻村さんの山周賞受賞も、あるんだろうけどなあ。

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コメント

僕の予想は辻村さんと原田さんの同時受賞でした。
結果は辻村さんの単独受賞でしたけど、最後まで競った相手っていうのが原田さんだったみたいですね。
山周賞からの因縁の対決は仲良く1勝1敗だったんですね。辻村さんおめでとうございます。

投稿: しょう「 | 2012年7月17日 (火) 22時54分

辻村さんの受賞は予想どおりだったし、本当に面白い短編集での受賞で良かった良かったなわけですが、
唯一の心残りは、吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、直木三十五賞の3冠制覇が無くなってしまったことですね。
辻村さんが一番その可能性が高いと思っていただけに。
そういえば、鹿島田真希さんは野間文芸新人賞、三島由紀夫賞、芥川賞の3冠制覇なんですよね。

投稿: あらどん | 2012年7月18日 (水) 02時51分

『オーダーメイド殺人クラブ』が直木賞では存外低い評価だったときは、
辻村さんも「候補回数ばかり重ねさせられるグループ」の仲間入りかとひやひやしました。
ズルズル受賞を引き延ばされなくて、よかったなあ、と思います。

それにしても今回の候補ラインナップは、かなり刺激的で面白かったですよねえ。

半年後の第148回が楽しみで、早くもワクワクしてきました(早すぎ)。

投稿: P.L.B. | 2012年7月18日 (水) 22時03分

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