第173回(令和7年/2025年上半期)の候補作のオビを並べる。
暑い、暑い、とその単語を繰り返すようになったら、もうじき直木賞が開かれる頃合いです。第173回(令和7年/2025年・上半期)の選考会が今週水曜日、令和7年/2025年7月16日に開かれます。暑いです。
約1か月前に候補作が発表されて、全6冊で総額12,760円、なけなしのサイフのなかから大枚はたいてすべてを購入し、夏の到来を感じながら一つ一つ候補作を読んでいる人は多いかと思います。いや、多いかどうかは知りませんが、ワタクシのここ1か月は候補作の読書にほとんど持ってかれました。
なんじゃこりゃ。おれの大事な12,760円、まるまる耳そろえて返しやがれ。……っていうふうな読後感ではなかったのでよかったです。
で、ふと6冊を眺めてみると、6冊すべてに共通していることがありました。オビが巻いてあることです。
同じ日に行われるもう一つの賞とは違って、直木賞の場合は、候補作すべてが書籍の形態をなしている、っていう状況になってン十年。巻いてあるオビに何と書かれているか、それによって選考委員の受け取り方が変わるとも言われ、あるいは選考委員をやっている人がオビに推薦文を載せている、という候補作も数々生まれてきています。
何といっても、直木賞を受賞した本には「直木賞受賞作」と書かれたオビが巻かれて増刷されるのが、日本文化のお約束となって久しいですし、受賞した人の昔の本にも「直木賞」の文字が踊ったオビに変わる、何だったら候補作になった段階で早くも「直木賞候補作」とデカデカ書かれたオビに差し替えられるのが、近年の風潮です。
直木賞とオビ。これほど関係の深い事象が、かつてあったでしょうか!
まあ、こちとら直木賞候補作だというだけで、機械的に手にとってレジに持っていくような変人なので、オビなんかまじまじ見たこともありません。だけど、よほどの達人になると、本に巻かれたオビをじっと見ているだけで、どれが賞をとりそうか、ピタリとわかってしまうらしい、というウワサを耳にしたことがあります。
作品の内容や、候補者の実力、そんなこたあ直木賞を構成する要素のなかでは、ささいなことです。虚心坦懐、直木賞の選考会を前に、じっと黙ってオビを見る。……何か見えてくることがあるかもしれません。
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▼オビ高110mm
ラストシーンが読みどころだ、とそんなふうに思いっきりハードルを上げちゃっていて潔いです。
▼オビ高103mm
※上記のオビは直木賞候補発表時に売っていた第2刷のものなので、いちおう初版オビがどんなだったかも出しておきます。
作品はともかく、黒川博行、桐野夏生、という二つの名前の並びにビビります。
▼オビ高75mm
これも相当ハードルを上げているオビです。
▼オビ高65mm
小学館文庫『教誨』と、新潮社の『波』がソデを飾って壮観です。
▼オビ高60mm
門井慶喜さんの讃辞がアツいです。あくまで讃辞であって惨事ではありません。
▼オビ高55mm
そうか、注目されている作家なんだ、ということがわかります。
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とりあえず「最高傑作」だと言い張っているもの、だれかに絶賛されているものが、それぞれ1点ずつある。そして、その本の部数ではなくデビュー作の発行部数をデカデカと掲示して釣ろうとするのは品がないな、ということは胸に落ちました。
このうち、いずれかの本は、直木賞の選考会を経て、せっせせっせと増刷がかかり、直木賞の三文字が躍動するオビに付け変わってしまいます。勘のいい人なら、どれに直木賞オビが巻かれるのか、すでにおおよそ見当がついているのかもしれません。ちなみにワタクシはまったくわかりません。予想したいとも思いません。
何がとるのか、どんな選考になるのか、純粋にわくわくしながら直木賞を楽しみたい。と思いながら、6つのオビをただじっと眺めて、その瞬間を待っています。オビを見つめたところで、いまのところ何も見えてきませんが、未来はいつも不確定。今回の直木賞もからっぽな心で楽しみたいと思います。
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