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2017年1月 1日 (日)

第95回直木賞『恋紅』の単行本部数

第95回(昭和61年/1986年・上半期)直木賞

受賞作●皆川博子『恋紅』(新潮社刊)
初版7,000部→7万(受賞約1年で)

 今日は正真正銘、一切、季節や時流とは関係のない直木賞のハナシに徹したいと思います。

 昭和60年代です。20万部を超える受賞作がぽつりぽつりと生まれるなかで、とくに大きく売れたというハナシを聞かない受賞作のひとつに、第95回(昭和61年/1986年・上半期)の皆川博子さん『恋紅』があります。

 このころ、芥川賞のほうは〈該当作なし〉がけっこう頻発しました。つまり受賞決定後に、直木賞だけ書店に華々しく並べられる、っていう機会が何度もあったわけです。ライバルとなる受賞作がない。直木賞にとっては、売り上げを伸ばす絶好のチャンス! だったかもしれません。

 だけど、直木賞だけしかないから直木賞が売れるのか。というと、どうやら、そんなことはないみたいです。

 『恋紅』について、まず初版の部数ですが、7,000部だったといいます。

「『恋紅』は初版が七千部。二刷二万部、三刷三万部の増刷が決定した。」(『週刊文春』昭和61年/1986年8月7日号「行くカネ来るカネ 私の体を通り過ぎたおカネ」より)

 だいたい標準的な初版刷り部数だと思います。受賞してから、すぐに2万部、さらに3万部、という増刷具合もおそらく、直木賞の通例どおりです。昭和61年/1986年7月から数か月、たった一作の「直木賞受賞作」として広く全国の書店店頭におかれましたが、販売状況は、かなりイマイチでした。

 そもそも時代小説の受賞作は、大して売れない。っていうジンクスが出版界を席巻してもおかしくないくらい、直木賞の時代小説は、(売り上げ的に)厳しいものがあります。なので、これは仕方ありません。

 8月の市場概況をレポートした『出版月報』9月号では、はっきり「直木賞の「恋紅」は伸びなやみ。」と書かれ、翌年の『出版指標 年報1987』(昭和62年/1987年3月)にいたっても、部数はさほど伸びなかったことが明らかにされました。

 その数、7万部。……当時の直木賞受賞作などと比べても、ほぼ最低水準と言っていいです。

 しかし、だいたい文芸出版の住人たちは、芥川賞のことが大好きなので、わざわざ直木賞に注目して「直木賞のくせに売れないでやんの」などと口汚く攻撃する手はほとんどなく、〈芥川賞は該当なしばかりでもう駄目だ〉だの、〈選考委員に女性を入れろ〉だの、そっちばかり盛り上がって、楽しそうにしていました。

 うらやましい話です。

           ○

 第95回は、ほかに受賞作がなく、部数についてのネタもないので、この前後の受賞作のことをまとめておくことにします。

 第91回~第98回(昭和59年/1984年・上半期~昭和62年/1987年・下半期)の分です。ついでに当時、低調低調とさんざん言われた(というか、気づくとだいたいいつも言われている)芥川賞のほうも、おまけとして付けました。

170101 1701012

 このあとの、第99回~第114回(昭和63年/1988年・上半期~平成7年/1995年・下半期)分は、以前のエントリーをどうぞ

 とりあえず以前と合わせても、グラフにしたのは、だいたい10年ぐらいのことで、直木賞の80年の歴史のなかでは一部にすぎませんが、言うほど売れていたという感じでもなけりゃ、でも馬鹿にするほど売れていなかった、というわけでもない、何ともノドの奥がこそばゆくなる売れゆきです。

 これじゃあ、直木賞の話題が、どうしても芥川賞のかげに隠れがちなのも、わかる気がします。

 その中途半端な立ち位置、直木賞の魅力的なところのひとつですよね。……と、いつもお決まりのセリフを吐いたところで、今日は締めます。とりあえず1月19日までは、新たな直木賞のことが楽しみすぎて、気が気じゃありません。

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