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2017年1月20日 (金)

第156回直木賞(平成28年/2016年下半期)決定の夜に

 直木賞には猛省をうながしたい!

 いったい、この候補作の並びに、『蜜蜂と遠雷』などという、だれが見たって受賞するでしょと言う以外にない小説を、入れなきゃいけなくなってしまった責任は、当然、過去の直木賞にあります。超能力の登場に抵抗感があるだの、オチのよくわからない展開だの、そんなことに気をとられすぎて、ここまで引き延ばしてしまった結果、熾烈な当落に向けての議論にもいたらず、しゃんしゃんと、だいたいの人が想像したとおりの受賞回になってしまいました。

 もっとダイナミックな展開が、直木賞には欲しい。というのが、一観客でしかないワタクシの望みです。これが直木賞、ってもんなんでしょうけど、もうちょっと事前にワクワクドキドキさせてくださいよ、頼みます。奮起せよ、直木賞。

 ……とは言いながら、『蜜蜂~』と同じ土俵に上げられてしまった候補作の数々も、本命ではなかった、ってだけのこと。べつに、読むに値しないクソな作品、というわけではありません(当たり前だ)。あげ遅れの人にようやくあげたと思ったら、同時にまた、あげ遅れの候補者を生んでしまう、という悲しさから、ひとまず目を背けて、やっぱり直木賞の候補作には、どれも楽しませてもらいました。

 『蜜蜂~』が本命ならば、逆・本命は『十二人の死にたい子どもたち』だったと思います。これまでの直木賞の性格からして、まず評価される状況が想像できない、ミステリーの約束事にのっとったうえに、最初から最後まで特殊な環境のなかでのハナシを貫く、冲方丁さんの、この潔さ。そこまで直木賞が歩み寄る日がくることを、はるか夢に見たりしますが、まあ冲方さんは、直木賞の動向など気にせず、ブレずに潔く書きつづけていってくれるんでしょう。頼もしい人です。

 ブレない、と言ったら、そりゃ森見登美彦さんを思い浮かべないわけにはいきません。いいじゃないですか、『夜行』。前の候補のときとは、ちょっと読み心地は違えども、あいかわらず、「直木賞っぽくない小説で、直木賞の候補になる」その堂々たる風格、健在です。確実に、「あげ損ね」作家のひとりなので、いつか直木賞のほうが「これまでスミマセンでした」と頭をさげて賞を差し出す日がくるんでしょうが、そのときの受賞作も変わらず、「直木賞っぽくない小説」であったら、うれしいなあ。

 垣根涼介さんの『室町無頼』が、選考会でずいぶん好評だった、と報道で知り、かなりほくそ笑んでいます。そうとうな気合が生身に伝わる、アッツい小説でしたからねー。体裁やバランスなんてクソくらえ、って感じの骨っぽさが、お上品な直木賞の水には合わなかったのかもしれませんけど、勇ましく既成のものをぶっつぶすぐらいの作品で、またふたたび、候補の場に戻ってきてほしいです。

 そして『室町無頼』と並んで、須賀しのぶさんの『また、桜の国で』も、授賞するかどうかで最後まで議論が交わされた、とのこと。こういうところで授賞の判断を下せればなあ、あげ遅れ案件が、ひとつでもふたつでも減らせるのになあ……とは思うんですが、あげ損ねを増やして歴史をつむいできたのが直木賞の特徴でしょうから、しかたありません。『また、桜の国で』は、実直でストレートで、でもエンタメに必須なサービス精神を忘れない作者の思いのこもった良作だと思います。

          ○

 もはや恩田陸さんの受賞については、何も言うことがありません。

 あまりに本命、本命、と言われすぎているものだから、ひさしぶりに「下馬評では大テッパンなのに、ふたをあけたら、低評価」みたいな、直木賞のノリも楽しみたいな、と思ってしまったのは、正直否定しませんが、何だ、まともじゃないですか直木賞。

 ちょっと芸能ニュースになりそうな人が(芥川賞とか)とったりすれば、「最近の芥川賞と直木賞は、話題性ばかり重視して……」などとトバッチリを受け、また、候補5回、6回の人がとったりすれば、「まだあげてなかったのかよ!」とツッコまれる、という直木賞の姿を見ていると、ああ、あんまり文句を言っていてはいけないな、と直木賞がかわいそうになってくる。……んですが、そういうそばから、「直木賞に猛省をうながしたい!」などといった文章でブログを書きはじめてしまったことを、反省したいと思います。

 まあ、今回の直木賞は、まともでした。

          ○

 決定発表の時刻も、やっぱりまともで(?)、早すぎもせず、遅すぎもせず。

 揉めた感じも、議論が煮詰まった感じもなく、前回とだいたい同じタイミングで、受賞が決まったようです。

 以下、受賞会見場への結果発表貼り出しの時間です。

  • ニコニコ生放送……芥:18時53分(前期比-21分) 直:19時16分(前期比+-0分)

 これで直木賞は第137回から20期(10年)連続で受賞者を出したことになり、直木賞史上の記録を塗り替えました。

 えんえんと続く、この連続授賞がいつ途切れるのか。また、候補回数の多いベテランへの後追い授賞の風向きが、いつ変わるのか。なんだかんだと、ハラハラしながら、半年後の第157回(平成29年/2017年・上半期)を待ちたいと思います。

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