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2013年7月18日 (木)

第149回直木賞(平成25年/2013年上半期)決定の夜に

 「ほんと、直木賞なんて全然話題にもならなくなったな。時代は変わったよ」……などという声を聞くと、ワタクシはじつはホッとするのです。そりゃそうです。直木賞が話題になる世の中のほうが異常です。きっと、日本もまっとうな社会になったのでしょう。よかったよかった。

 ですが、世間が騒いでいるか/いないか、はうちみたいな辺境ブログには何ら影響がありません。第149回(平成25年/2013年・上半期)もまた、選考会後の夜は訪れてしまいました。おのずと「決定の夜に」エントリーを書く。息を吸って吐くがごときです。自然のなりゆきです。

 だって、あなた。候補作の6つ、読みました? どれも面白くなかったですか? 少なくともワタクシは、世知辛いこの世の暮らしを忘れさせてくれるような、6つの異なる読書体験をできました。受賞したとか、しないとか、そんなことは二の次において、これら6つを没頭して読んだ日々を思い返しつつ、頭に浮かんだことを書いておきます。

 「文学賞なんてどうでもいいよ」の風潮にあって、候補になるたび、わざわざ直木賞に賭ける意気込みを表明する伊東潤さん。その姿勢が、ワタクシにはまぶしくて仕方ありません。そもそも、これだけ多くの人がこぞって、伊東さんの『巨鯨の海』に本命印を付ける時代がやってきた、そのことにワタクシは満足しちゃうんですけど、でもやっぱ、受賞会見する伊東さんの雄姿を、この目に焼きつけたいぞ。ぜひ、さらなる第4戦目が組まれることを希望します!……それと、早川書房以上に直木賞とは縁遠い光文社が、いったいいつ直木賞に達するのか、という興味も持ちつつ。

 直木賞なんてものは、基本ジミなのに、みんなから目を向けてもらうと舞い上がります。今回もまたまた、恩田陸さんの力を借りてしまいました。恩田さんが5度目の候補打診をイヤがらずに受けてくれたことで、どれだけ直木賞界隈が盛り上がったことか。作家としての実績は当然のこと、その功績にこそ、ワタクシは直木賞ファンとして感謝したい。せずにはいられません。ちなみにワタクシ、『夜の底は柔らかな幻』ではじめて恩田作品を手にとる人が続出し、何ちゅう物語だ!と議論が巻き起こる、そんな未来を、つい想像してワクワクしちゃいました。 

 『ジヴェルニーの食卓』みたいな、豊潤な物語を、まさか直木賞の候補作として読めるとは、まったくこれだから直木賞候補作読みはやめられません。日常の生活を忘れさせてくれる極上のひととき……などと言うと、デキの悪い高級リゾートのキャッチコピーみたいですけど、原田マハさんには、もっともっと、美術や美術家たちのおハナシを書きつづけてほしいです。きっと、そのうち、「え、あのマハさんの美術シリーズを、直木賞は落としちゃったの? 相変らず直木賞だなあ、おい」と言われる日が来るのでしょう。ええ。いつものことです。

 直木賞ファンはたいてい孤独です。直木賞だけに興味をもっている、というだけで不審者のように見られます(被害妄想かもしれません)。そこに、湊かなえさんのような名のある方が、直木賞と関わってくれて、これでワタクシも明日から胸を張って生きていけます。『望郷』のような、さまざま趣向を凝らした短篇をずらりと揃えてくるあたり、さすが実力派、お見事の一言です。

 21世紀の日本にあって、夢を見させてくれる男、宮内悠介。また今回も、SFが直木賞をとるのではないか、というイイ夢を見させてもらいました。『ヨハネスブルグの天使たち』を候補にするのなら、日本文学振興会には、SFテイスト全開のどんな小説でも、どんどん直木賞の候補に挙げてもらいましょう。宮内さんも、もうまわりがウルサい!とウンザリするまでは、ぜひお付き合い願いたいものです。また夢を見させてください。

          ○

 ところで、先週書いたブログのエントリー、けっこうイイ線いってたんじゃないか、と偏狭的な直木賞ブログの主を喜ばせてくれて、桜木紫乃さん、ほんとうにありがとうございました。『ホテルローヤル』の、どんより暗いようでいて、明るさも感じられる妙なたたずまいが、イイなあと惚れちゃいました。

 オール讀物新人賞の受賞から初の単行本までの苦労、みたいな話を受賞会見で聴いて、まじ泣きそうになりました。「直木賞なんて、もう権威もなければ、話題にもならない」なんちゅう風評は、桜木さんの歩みのまえでは、何の力も持ちません。軽いようでいて濃厚な小説、またこれからもお願いします。

          ○

 ちょっと今期は夜、外出していたもので、サイト巡回もおろそかです。

 宮内悠介さんの待ち会に出席していた大森望さんが、今回は、宮内さんへの電話より先に、記者会見場で受賞発表が行われてしまった、うんぬんと明かしていました。直木賞やその周辺にカンペキを求めたって仕方ないことは、直木賞に付き合っていれば、おのずと知れたことです。今後も直木賞は、ぜひ「自分は大した賞ではないんだ」と言い聞かせて、ゆるーい感じで、続けていってください。

 ニコ生での受賞発表時刻だけ、記しておきます。

  • ニコニコ生放送……芥:18時50分(前期比+1分) 直:19時03分(前期比-39分)

 そして次回は、いよいよ第150回目。節目の回、だからといって背伸びせず、粛々と直木賞の日がやってくることを、切に願っています。

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コメント

桜木さん受賞&管理人さん予想的中オメデトウございます!!
ボクも桜木さんの今までの歩みと、お子さんへの想いを聞いて
泣きそうに、というより泣いてしまいました。

こういう地道に歩き続けて力をつけた人に、光を当てるのが直木賞のイイところだと思います。

その後のゴールデンボンバー関連の話も良かったデス。
芥川賞の会見の方が話題をさらいがちですが、今回は藤野さんの美人ぶりにも負けない盛り上がりがあって
そういう意味でもヨカッタのではナイでしょうか(笑)

あぁ~、早く選評読みたいなぁ~。8月まで待てないっ!

投稿: しょう | 2013年7月21日 (日) 21時50分

しょうさん、

ワタクシのは「予想」とも呼べないもので、
しかも、はっきり「今回は『ホテルローヤル』受賞と予想します!」と断言したわけでもないので、
威張るほどのことではないのがアレですが、
でも、注目の薄かった人が脚光を浴びる、っていうのは
直木賞を追う者にとっては超絶うれしい現象です。

ラブホの小説、金爆のファン、といったキーワードだけで『ホテルローヤル』を読んで、
「ん? 何だこの小説は……」と思う人が(おそらく)たくさん出るんじゃないかと思うと、
むふふ、な気持ちです。

投稿: P.L.B. | 2013年7月22日 (月) 02時50分

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