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2012年1月17日 (火)

第146回直木賞(平成23年/2011年下半期)決定の夜に

 ガッチガチの本命受賞、けっこうけっこう。とって当たり前だからこその「本命」ですもんね、ってことで今夜18時54分ごろに、第146回(平成23年/2011年・下半期)直木賞は、つつがなく決まりました。

 つつがなさすぎるきらいはありますけども。

 文学の人たちの話題は、いつもどおり、どうぞ芥川賞のほうに向けてもらいましょう。「未来の文学」みたいなものとは無縁である直木賞は、しっかりその無縁感を発揮してくれました。ほんと嬉しく思います。

 うちの親サイトや当ブログを以前から読んでいる方は、うすうすお気づきかもしれません。ワタクシは以前から葉室麟さんに直木賞を受賞してほしい派でした。今晩のニュースを受けて、思いが口からあふれ出そうです。……いや、まずはファン心は抑えつつ、先に、受賞しなかった5人の候補作家にメッセージを送らせてもらいます。

 『コラプティオ』が受賞していたら世の中ひっくり返ったかもしれません。でも、候補に挙がったことがきっかけで、真山仁さんの作品が今より一層、がんがん読まれるようになる、と信じたいところです。直木賞作家よりも人の心をつかんだり、のちに足跡を残したりする作家は、たーくさんいます。たぶん文学賞は日本を変えられませんし。賞なんて気にせずに、真山さんの描く未来像めざして、ぐいぐい突き進んでいただきたいと思います。

 いやあ、桜木紫乃さんの『ラブレス』。直木賞とると思ったんだけどなあ。最後は『蜩ノ記』との一騎打ちの決選投票だったらしいんですけど。個人的には『ラブレス』が直木賞受賞作リストに入らなかったことが意外です。在庫切れを起こしている書店が頻発(つまり、刷り部数が少ない)って噂も聞きますが、いいじゃないですか。書店の入口にどかんと積んである本だけが本じゃないですもん。桜木さんには、いつか直木賞とっていただいて、「最初に候補になったときは、何もかもが新鮮で……」みたいな回想インタビューを聞かせてください。

 直木賞の候補になったことがあるけど、とれなくて、でも直木賞以上の実力で天下に名を知らしめる……みたいな伊東潤さんの未来を見てみたいぜ。なにせ「直木賞=天下をとる」みたいな時代は、もう過ぎ去っていますし。新たに直木賞に替わって天下一と呼ばれるようになった文学賞、か何かをバシッと受賞して、カッカッと笑い上げてほしいなあ。そういうことを伊東さんが成し遂げたら、きっとカッコいいしなあ。

 歌野晶午年譜の、作家デビュー20数年後のあたりに、「直木賞候補になる」みたいな一文が加わるのも、唐突すぎて、なかなかオシャレじゃないですか。歌野さんの業績や作家生活に対して、影響を及ぼせる力は、直木賞になど、まるでないですもんね。のちのち世間話やエッセイのネタに困った折りには、直木賞候補エピソードを笑いバナシ程度にでも使ってやってくださると、直木賞も喜ぶと思います。どうぞ、よしなに。

 ワタクシが何か言う必要はありますまい。恩田陸さんに関しての直木賞に対する怒号、冷笑、絶望については、この数時間ですでに、多くの人が書いていますから。とにかく恩田さんに対しては感謝しかありません。候補入りの打診を断わることなく、周囲からさんざん勝手なことを言われる騒ぎに4度も耐え、「直木賞ファン」なんちゅうワタクシのようなキモい人種を毎回楽しませていただいて……。とるのか。とらないのか。ハラハラドキドキ感を今回も提供していただき、ありがとうございました。

          ○

 どうですか。葉室麟さんが直木賞受賞。この据わりのよさ。360度、どの角度から見ても均整のとれた美しい姿じゃないですか。

 過去4回(第140回第141回第142回第145回)、毎回、ワタクシは選考会後のエントリーで葉室さんについて泣き泣きメッセージを書いていました。そんな過去の自分に教えてやりたい。peleboよ、辛抱せよ。辛抱すれば葉室さんにお祝いの言葉を書けるときが、かならずやってくるのだぞ、と。

 『蜩ノ記』。きっと若いころ暴れ馬だった(と勝手に想像する)葉室さんならではの、気持ちのこもった作品で、楽しく読みました。さあ、これで葉室さんの活躍の場がさらに広がることでしょう(って、今もうすでに、ですか、すみません)。ミステリーやユーモア物だけじゃなくて、現代物やノンフィクション、あるいはSF、ファンタジーなどなど(?)、きっとこれまで以上に多彩な葉室さんが見られるのかと思うと、嬉しくてしかたありません。

 直木賞の場で、もう葉室さんをお見かけする機会はなくなってしまうのですが(いや、次は選考委員ですか)、いままでありがとう、これからもよろしくお願いします、です。

          ○

 何といっても今回の直木賞、最大の珍事は、「芥川賞より先に受賞発表された」って点に違いありません。19時になる前に発表ですよ、19時になる。たぶん、この興奮はほとんど誰とも共有できないとは思いますが、芥川賞より先の発表なんて、チョー珍しい。その場面を見ることができて、幸せいっぱいの1月17日でした。

 というわけで記録しておきます。以下、今回の直木賞(と芥川賞)が発表された時刻です。

  • ニコニコ生放送……芥:18時58分 直:18時54分
  • 日本文学振興会(主催者)……芥:18時58分 直:18時54分
  • 読売新聞……芥:19時00分 直:18時55分
  • 朝日新聞……芥直:19時21分
  • 毎日新聞……芥直:19時51分

 昨年第144回のニコ生での発表中継スタート以来、もうほとんど新聞社サイトの即時性に意味が薄らぎかけているなかで、読売新聞のこの頑張り。偉い!

 ニコ生もtwitterも見ていないけど、1分でも1秒でも直木賞の結果が知りたい、っていう多いのか少ないのかわからない層に向けて、その期待に応えられるよう働きつづける影の努力。多くの人に認められなくてもいい、自分は自分の信念で最大限の働きをする、みたいな人を描いた葉室麟『蜩ノ記』の世界に通ずるよなあ。……って、ずいぶん強引な締め方だと自覚しつつ。

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