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2010年7月15日 (木)

第143回直木賞(平成22年/2010年上半期)決定の夜に

 しっかし文藝春秋は強いなあ。

 強い、なんて表現は間違っているんでしょうけど、要は『オール讀物』編集部と、『別冊文藝春秋』編集部の人たちが、日頃からがんばって、選考委員たちの嗜好をおのれの骨肉にしみこませている結果、なのかもしれません。

 で、今夜の第143回直木賞(平成22年/2010年・上半期)は、すんなりと初候補の作家がとってくれてめでたいな、めでたいな。ただ、その前に、ワタクシには言っておかなければならない言葉があります。今期も6つの候補作には、ぞんぶんに楽しませていただきました。

 直木賞は、受賞作だけの世界じゃない。いろいろなジャンルの、楽しさのギュッと詰まった候補作に数多く出逢えることこそが、魅力なんだもの。

 乾ルカさんが、数年前に力づよく小説家への道を歩み出し、そして歩みを止めていないことに、頭が下がります。オール讀物新人賞などとったって、なかなか続けて書いていくのは大変でしょうから。他の受賞者の方々をみている限り。ええ、乾さんには、同じ北海道出身の、先輩オール讀物新人賞作家、宇江佐真理さんみたいに、直木賞の候補にあがるぐらいの作品を、続々と、続々と書いていっていかれる未来が待っていて、楽しみだなあ。……いや、宇江佐さんみたく「万年候補」にならなくてもいいんですけど。

 ほんとうにこれでいいのか、道尾秀介さんの扱い。詮ないことですけど。道尾さんには1回目か2回目の候補で、ススーッととってほしかったなあ。「山本周五郎賞作家は、その受賞後、しばらくたってから直木賞をとる」とか、「人気ミステリー(出身)作家は5度6度、候補にならないととれない」とか、そういう「直木賞のオキテ」めいたものに、道尾さんがハマっちゃうのは似合わないよなあ。こうなれば、ぐうの音も出ないくらいのベッタベタな推理小説で、直木賞とってください。そうしたらカッコいいですもの。東野圭吾さんみたいに。

 万城目学さんは、もう直木賞の枠を超えている作家だ。と、ワタクシは思っていますので、たびたび候補に挙がって、楽しませてくれるだけで満足です。終わり。……と言うだけじゃツレないので、勝手な期待をひとつ。きっと万城目さんぐらいの才人、そしてキャラであれば、いずれ直木賞のことを舞台にした、トンデモな小説を書いてくれることでしょう。その日を楽しみに待っています。

 ワタクシがいちいち言うまでもなく、冲方丁さんの今後には、べつだん何の曇りもありません。直木賞なんちゅう暴風雨が過ぎ去ったあとは、何事もなかったかのように驀進されることでしょう。『天地明察』を読んだ何十万人かの人たちが、時代小説って面白いんだな、と思って他の時代小説にまで手を伸ばしてくれたら嬉しいよな、と思うのみです。……あ、それと。「吉川英治文学新人賞作家は、直木賞がとれない」のジンクスも、いつか破ってやってください。できれば、SFで。

 おお。無冠の女王。とれなかったらとれなかったで、姫野カオルコさんの株が、またさらに上がってしまう、という。何と不思議なお方なのだ。『リアル・シンデレラ』、面白かったなあ。倉島泉が、ある人たちにとっては美人に見えていた、と中盤あたりに明らかになったときには、手を叩きました。これだ、これが姫野さんだ。やるなあ、と。ワタクシの思う、直木賞の名候補作のひとつに、確実に入る小説でした。……直木賞? あんなでくの坊に、姫野さんの魅力はわかりませんのです、きっと。

          ○

 ところで、なんで今度の受賞は、こんなにサックリ感があるんだ。直木賞における初候補は「顔見世」じゃなかったのか。いや、こういうのもまた、直木賞の伝統的なあり方のひとつじゃないか。……などなど、知ったふうな口をききたくなる、中島京子さん受賞についての、あれこれ。

 文春のハナシはいいとして、講談社のご担当者は嬉しいだろうなあ。小説家・中島京子さんといえば、講談社の人だもんなあ。吉川英治文学新人賞、あげたかっただろうなあ。これで、吉川新人賞は永久に贈れなくなってしまった。嬉しい反面、ちょっぴりホロ苦さも感じられちゃったりして。

 いずれにせよ、「直木賞なんて何十年も小説書いてなきゃとれないんでしょ?」みたいな空気が払拭されて、清らかな気分。それから、昭和初期とか戦争中のことを書いたら先輩がたにダメ出しをくらう、てな定型も崩れたようですから、よけいに晴れやかです。

 まあ、これまでの直木賞を覆すような、驚きのドンデン返しのあった授賞劇じゃないんでしょうけど。これで中島京子という作家の存在が、数多くの人に知れ渡った、ってことでしかないのだ、みんな騒ぎすぎだ、落ち着け落ち着け。……って、騒いでいるだけのワタクシには言われなくないですよね、そうですね失礼をば。

          ○

 うちの「直木賞のすべて」は、基本、記録サイトでもあるので(忘れそうになっていた)、今回も以下、それぞれのサイトの速報時刻を書いておきます。今回は、文藝春秋書籍営業部の公式twitterアカウントもお仲間に加えてみました。

  • 日本文学振興会(主催者)……芥:19時16分 直:19時22分
  • twitter( @bunshun_hceigyo )文藝春秋書籍営業部……芥:19時17分 直:19時24分
  • 読売新聞……芥:19時30分 直:19時30分
  • MSN産経……芥:19時32分 直:19時32分
  • 毎日新聞……芥:19時34分 直:19時34分
  • 朝日新聞……芥:19時54分 直:19時54分

 珍しく、直木賞が早い時間に決まりましたねえ。NHKの7時のニュース(19時30分までの放送)に間に合ったのは久しぶりです。選考委員が7人に減ったことが多少は影響したのかどうなのか。あるいは、受賞作『小さいおうち』と、他の候補作に、どれだけ評価の差がついたのか。ああ。来月下旬の『オール讀物』の「選評」が待ち遠しいぜ。

 いや。これから明日にかけて、各ニュースサイトやブログやtwitterや2ちゃんや、その他もろもろを見てまわる巡回生活が待っているのだった……。何してるんだろ、おれ。

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