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2010年4月11日 (日)

直木賞とは……雑誌に連載をもって、いくつも賞をとって。そしてようやくとれる「文壇の頂点」。――青山剛昌『名探偵コナン』より「祭りの夜」「アリバイは完璧!?」「写真のワナ」

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青山剛昌「祭りの夜」「アリバイは完璧!?」(平成7年/1995年8月・小学館/少年サンデーコミックス『名探偵コナン 6』所収)、「写真のワナ」(平成7年/1995年12月・小学館/少年サンデーコミックス『名探偵コナン 7』所収)

(←左書影は上が『名探偵コナン 6』、下が『名探偵コナン 7』)

 そう。これは小説ではありません。ここは直木賞専門ブログなんです。専門外も甚だしい。

 「直木賞を描いた作品」を探すとき、あえて「小説」の縛りを外してしまえば、そんなもの無数にあるでしょう。マンガ、アニメ、テレビドラマ、映画、演劇……。

 ですので、この変化球は今週一回きりにとどめます。

 いや、だいたいですよ。ワタクシは、微力な直木賞オタクです。『名探偵コナン』の何が語れるっていうんですか。語れるわけないじゃないですか。ねえ。このシリーズに関するさまざまなデータを収集・アップしてくれているサイト「名探偵コナン資料館」に、感謝とエールを送りつつ、ワタクシは分をわきまえて、直木賞に関係ありそうなことだけ語ることにします。

 直木賞? もとい。『名探偵コナン』上では、直本賞、です。

 「祭りの夜」「アリバイは完璧!?」「写真のワナ」。この3つのFILEでは、作家が作家を殺す事件が描かれます。かたちとしては「倒叙ミステリー」であり、冒頭に、はっきり殺人場面が出てきます。

 犯人は笹井宣一(ささい・のりかず)。いちおう、「一般に名の知られていない」作家という役回りです。ほんとうは小説を書きたいのに、『オーストラリア紀行』とか、そういう紀行物を書いているらしいです。

 いっぽう、被害者は今竹智(いまたけ・さとる)。こちらは、かなりの有名人なんですね。笹井とは昔コンビを組んでいたことがあり、二人合作で「今井ともかず」のペンネームで小説を書いていました。

 この二人のあまりの現在の境遇の違いが、作中、三コマのセリフで表されています。

 埼玉県桶山の天下一春祭の会場にて、笹井が、江戸川コナン・毛利小五郎・毛利蘭の三人と出会う場面です。

一コマ目・蘭「「今井ともかず」なら わたし知ってます!!」「「月下のロマンス」とか 「風がきこえる」とか 中学の時たくさん 読みました!!」

二コマ目・小五郎「でもへんだなー… 「今井ともかず」というのは、 この前、直本賞を 受賞した今竹智が デビュー当時使ってた ペンネームだと…」

二コマ目・笹井「今竹智とは 古い友人なんです。 昔、二人で組んで 書いてたんですよ。」

三コマ目・蘭「え―― あの有名な 今竹智さん と――!」

三コマ目・笹井「ええ… 今日も彼と 二人でこっちに 来たんです…」「直本賞の祝いに 彼の故郷で一晩 飲み明かそうと 思いましてね。」(『名探偵コナン 6』「祭りの夜」より)

 どうです。

 そもそも、毛利小五郎とその娘・蘭が、そうとうな小説好きであることがわかりますよね。驚くほどに。デビュー当時使っていたペンネームから、すらっと作家名を連想できるなんて、よほどですよ。

 たとえば、です。平成11年/1999年8月9月ごろ、まちで出会った人が「野原野枝実」と口にするのを聞いて、「ああ、この前、直木賞をとった桐野夏生のことか……」とすぐさま返せるような人を、想像してみてください。……

 いや、ここでは、そんなことより、二人の作家の対比が重要なのでした。

 今竹智は、かように有名人。一年前、と言いますから、おそらく直本賞をとるまえから『文芸時代』という雑誌に「剣勇伝説」を連載している男。

 しかも、この「剣勇伝説」なる作品も、毛利小五郎をして、

「ああ… 一年前から始まった あの大河小説の…」(『名探偵コナン 6』「アリバイは完璧!?」より)

 とすぐに思い出されるぐらい、名の知れた作品らしいんです。

 そして、最後に笹井の犯行動機が明かされるのですが、これも、とうに開いてしまった二人の有名度の違いに根を発していました。要は笹井の嫉妬心だった、ってわけでして。

「私は一年前から 今竹を抹殺する事を 決意してたんだよ!!!」「奴に代わり 文壇の頂点に 立つためにな!!!」

「そうだ…一年前だ… 「文芸時代」のメイン連載は 私の作品でいくことが 決まってたんだ…」「だが、編集部は ギリギリになって 持ち込まれた今竹の 企画にとびついた!! 今竹の方が名が通って いたからな!!」

「私にとっちゃ あの連載は、 作家生命をかけた 最後のチャンス だったんだ!!」「なのにあいつは そんなオレを あざ笑うかのように 横取りしやがった!!」

「フン… おかげで私は 落ちぶれる ばかり…」「あいつは 数多くの賞を 受賞していると いうのに…」

「知ってたか? 刑事さん…」「今竹が この前、直本賞を 受賞した あの作品…」

「あれは昔、私と今竹が組んで 書いていた頃に 二人で考えた話 だったんだぜ…」(『名探偵コナン 7』「写真のワナ」より)

 そうですか。それはつらかったでしょうねえ。

 まあ、ほとんど被害妄想に囚われた笹井さんの言葉ですから、信用するのもヤボなんですけど。「文壇の頂点」ですと? ははあ。雑誌の連載を横取りできるほどのネームバリューがある。数多くの賞を受賞している。これを、笹井さんの目から見れば「文壇の頂点」ってことになるんでしょう。

 そして、その極めつきが「直本賞」であると。

 ……もちろん、現実の直木賞のほうは、昔も今も、頂点なんてとんでもない、出発点でしかありえないことは確かです。しかし、何だか賞の名前だけが有名になっちゃっいましたからねえ。「文壇の頂点」を表現するときに、ついその名をモジッた固有名詞をつけたくなる、そういうことなんでしょうか。

 それはそれとして。

 「直木賞」なるキーワードは、有名と無名の落差をイメージさせるのにもってこいの性質なんでしょう。それはわかります。『名探偵コナン』は、そのイメージをよく活かしていますよね。ねえ。かつて胡桃沢耕史が、司馬遼太郎やその他、昔の仲間との格差を嘆いたのは、やはり自分だけ直木賞をとっていなかったからですし。

 おっと。待ってください。『名探偵コナン』は、「昔の仲間」ってだけの設定じゃなかったんでした。昔ふたりで組んで、一つのペンネームで小説を書いていた同士だと。

 んもう。平成7年/1995年の段階で、そんな設定をもってくるなんて。そんなことしたら、おおかたの人が頭に思い描いちゃうじゃないですか。岡嶋二人のことを。

          ○

 いやいや、『名探偵コナン』の笹井宣一+今竹智=今井ともかずと、岡嶋二人は、何の関係もないと思いますよ。ええ、単にこれは、読み手の問題でして。

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 平成7年/1995年といえば、井上夢人さんの『おかしな二人 岡嶋二人盛衰記』(平成5年/1993年12月・講談社刊->平成8年/1996年12月・講談社/講談社文庫)が刊行されて一年ちょっと。一人は順調に小説家の道をあゆみはじめていましたが、一人は、なかなか新作を出せていない状況。ワタクシらみたいな、何も知らない外野の人間は、そりゃいろいろと勝手な憶測をめぐらすわけです。

 徳山諄一さんは、どうしているんだろう。もう小説を書く気がないのだろうか。そもそも、岡嶋二人が解散した経緯は、すべて井上夢人さんの書くとおりだったのだろうか。などなど。

 まあ、そういう他人ゴトな想像のハナシは置いておくとしまして。『コナン』の「今井ともかず」ってペンネームは、二人の名前を組み合わせただけのものですが、「岡嶋二人」が生まれる前にも、やっぱりそういう発想はあったらしいです。

「「どうやって名前をつけようか?」

「アナグラムは、どうだ?」

「アナグラムって、なに」

「二人の名前をバラバラにしてさ、それを組み合わせて違う名前を作るんだ。女性の名前になるようにして」

(引用者中略)

 そして、僕たちが作り出したのは、

 『市富柚子』

 という名前だった。「いちとみ・ゆず」と読む。「とくやまじゅんいち」と「いのうえいずみ」から三文字ずつ取り出し、組み合わせただけのものだ。これが、僕たちの手にした最初のペンネームだった。」(『おかしな二人』「盛の部 7 レディーL」より)

 おお。さすがに、「今井ともかず」ほど安易じゃありませんでしたね。

 ところで、平成7年/1995年の段階では、まだ岡嶋二人のかたわれ徳山諄一さんは、そのうち(…ってこれ、『おかしな二人』に出てくる文のマネですけど)小説を発表するかも、と思われていた気がします。なにせ解散からまだ4、5年しかたっていませんでしたし。

 じっさい、田奈純一名義の「キャット・ウォーク」(『小説推理』平成3年/1991年3月号、4月号)や、それ以外にも別名義の短篇を発表したりしていたらしいですからね。もっとさかのぼって、解散直後の情報によると、やっぱり徳山さんも小説家として活動していくつもりだったようですし。

「「岡嶋二人は岡嶋二人であって、井上でも徳山でもなかった。今後は、僕の気持ちの上での勢いをそのまま流し込んだものを書きたい。アラは残るかもしれないけど、直感的な面白さを大切にしたい」と期待させる。

 独立第一作は、講談社から発売の書き下ろしになる予定。春ごろ刊行を目指すが、タイトルもペンネームも未定である。「一人になって、監視の目がなくなるっていうのは大きいですねぇ」と苦笑いする。「洒落たミステリーと言われるのは抵抗があるから、泥臭くて面白いものを目指しますよ」という。」(『週刊読売』平成2年/1990年1月7日・14日合併号「'90年急上昇確定 新時代を築く注目株18人」内「一人ずつになる岡嶋二人」より)

 ふふ。この記事に書かれた予定と、現実に起こったことを合わせると、『おかしな二人』が描くところの徳山諄一像がまたピッタリなので、いやあ、徳山さんらしいなあ、と微笑ましい限りですよね。

 そうだ。『名探偵コナン』のことを言えば、この「天下一春祭事件」が発表されていたそのころに、徳山さんも推理マンガ界に関わっていた、というのも、われわれ読者の下世話な関心をひく重要な要素かも。

 つまり、新保博久さんと「新徳丸」というユニットを組み、『週刊少年チャンピオン』の「探偵ボーズ21休さん」のトリックプランナーを務めていたのが、ちょうど、平成7年/1995年だというわけで。

新徳丸・S (引用者中略)最初は、『金田一少年の事件簿』や『名探偵コナン』のヒットを目の当たりにした「チャンピオン」の編集サイドの方から、以前からマンガ原作でつきあいのあった作家の夢枕獏さんに「だれかミステリーマンガの原作を書ける人で心当たりがないか?」とのオファーがあったことが発端なんです。(引用者中略)まず私のほうにお声がかかりまして、「えーっ、一人じゃイヤだから」ということで、Tさんを引きずりこんだというわけなんです。」(『小説現代増刊メフィスト』平成10年/1998年10月「法月綸太郎の特別連続対談 隠れミステリアンを探せ! 第九回ゲスト 覆面ミステリーユニット 新徳丸S&T」より)

 ちなみに、この対談(鼎談)は「覆面」といいつつ、新徳丸の正体がほとんどバレぎみ、という前提があって(?)、こういうくすぐりも用意されていたりします。

法月 誘拐ものはお好きですよね。

新徳丸・S ええ。

新徳丸・T (ニヤリと笑って)誘拐ものは以前から好きですね。」(同「隠れミステリアンを探せ!」より)

 あるいは、こういうやりとりとか。

法月 お二人でボケとツッコミの役割をもし当てはめるとしたらどうなります?

新徳丸・T たぶん僕がボケでしょう。

法月 新徳丸・Sさんがツッコミ。

新徳丸・S そうなりますかねえ。でも、ほとんどのトリックを考えたのはTさんのほうですから。(引用者中略)

法月 ダウンタウンでいうと松本人志とか、そういう感じですか。

新徳丸・S とんでもない思いつきというのは、あんまり頭が論理的になってないときのほうが出るみたいで。

新徳丸・T 最初はあまり論理的じゃないもんね。

(引用者中略)

新徳丸・T そうなのかねえ。僕はボケか。よくわからないでずっとやってきたところはあるけれども(笑)。」(同「隠れミステリアンを探せ!」より)

 『コナン』の合作コンビ「今井ともかず」のかたわれ、笹井宣一は、それでも自分ひとりでもいくつか小説(なのかな?)を書いて執念を燃やしていました。「岡嶋二人」の徳山さんの場合は、得意とするところが発想であり、あるいは発想をこねていく才であるらしいですし、それより何より、ご自身あまり表舞台に立ちたくない感じが伝わってきます。

 「今井ともかず」と「岡嶋二人」を連想したこと自体、ばかばかしいことでしたね。失礼しました。

          ○

 直木賞からハナシが逸れに逸れました。

 「マンガに描かれた直木賞」を取り上げるのは、今日一回かぎり。ってことで、すこしマンガと直木賞のことに触れておきます。

 もちろん、ワタクシは、マンガがどうだのこうだの、偉そうに言えるほど知識がありません。そういう立場からみると、「文化」なる得体の知れない領域のうえで、マンガがたどってきた軌跡と、大衆小説(というか通俗小説)が歩いてきた道のりとが、どうにも、だぶって見えてしかたありません。

「水木しげるのマンガへの取り組みは、六〇年代に戦後マンガが黎明期から発展期に入ってもなお、サブカルチャーとして低級文化に位置づけられていることへの反発と一人前の文化として市民権を得ようとする情熱によってつき動かされていたといえよう。(引用者中略)水木によれば従来の子どもマンガは、商業誌とタイアップした手塚治虫に代表される子どものおやつ的な「おもちゃマンガ」であった。その「おもちゃマンガ」を乗り越え、子どもの満足を得ると同時に大人の鑑賞(干渉)にも堪え、かつ社会的な視点、生活の原点を直視しようとする試みに満ちたマンガが劇画であった。」(平成19年/2007年10月・現代書館刊 小山昌宏・著『戦後「日本マンガ」論争史』「第二章 手塚治虫×水木しげる 子どもマンガ・大人マンガ(劇画)論争」より)

 通俗小説も、低級っていって馬鹿にされていたからなあ。今でも馬鹿にする人はいるかもしれないけど。

 直木賞、というかこの賞がベースに置いた「大衆文芸」、直木三十五が懸命にその質の向上をはかろうとした「大衆文芸」って概念も、まあ、上に引用したマンガのハナシに似てやしませんか。ねえ。低級文化に位置づけられていることへの反発、一人前の文化として市民権を得ようとする情熱、そのものだもの、直木賞の歴史なんて。

 それから、エロとバイオレンス(うわ。こういう言葉を発するのも、妙に古くさくて恥ずかしい)との関わり、とか。

「今の日本人は漫画とは猥画、と思ってるのではないかと思うほど、性の赤裸々な描写が漫画の中で大きな幅を占めているのである。

 これは、たんに漫画界だけを叱るわけに行かないので私の接触のある小説界でもそうで、有数な大雑誌から注文があると必ず編集子からは「なるべくエロに願います」という念押しがある。そして私も、生活上、ある程度の妥協はするのであるから、これだけ漫画家がいて何とか職業化しようというのでは「エロに!」というジャーナリズムの至上命令に服せざるを得ないのであろう。」(昭和53年/1978年11月・創樹社刊 飯沢匡・著『現代漫画家列伝』「田中比左良」より)

 飯沢匡さんが「小説界」といえば、それは文芸誌のことなんかじゃありません。そりゃ『文學界』や『新潮』『群像』の編集者が、作家に「なるべくエロに願います」と言っていたとしたら面白いけど。まあ、エロと言ったら中間小説誌、通俗小説誌、あるいは週刊誌のたぐいでしょう。直木賞が対象とする小説群の一部です。

 直木賞とエロとの戦いは、表立ったものは、あまりありません。ただ、水面下で直木賞が、エロい小説とどう付き合っていくかのテーマを突きつけられたことは容易に想像できます。だって、活きがよくて本当にたくさん読まれている小説は、だいたいエロがかっている、という時代がありましたからね。

 そういうものは候補を選定する段階で排除しまくり、けっきょく、お茶の出がらしみたいなボソボソした小説を、候補作として並べてしまったところに、ワタクシは直木賞の戦闘結果を見るわけですが、どうでしょうか。

 エロ、に限定しなくてもです。「賞=きれいゴト」と、大衆の喝采をあびるもの、との両立あるいはジレンマ、っていうのはあるでしょうねえ。

 あ、そうですよ、直木賞とマンガ、ときてあの文藝春秋漫画賞のことを思い出さないわけにはいきません。

 文春のやることにだって、いい面もあれば悪い面もある。まったく当たり前のことです。直木賞が、とかくギャーギャー言われ続けるのと同様、文春漫画賞だって好評より悪評がついて回ったのは、もういかんともしがたい。

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 いわく、マンガのことなど知りもしないお偉方(おじさんたち)が決めてる。いわく、時代遅れの授賞ばっかり。いわく、文春漫画賞に選ばれたら、それはつまり面白くないマンガ、という烙印を押されたも同然。などなど……

「文春漫画賞のまだありし頃。審査員にならないか、という話があったわけ。光栄とは思ったけど、気がすすまなかった。荷が重いってこともあったし、その器じゃないだろおまえは、ってのも、もちろんね。でも、一番の理由は、ボクの耳にはその頃の文春漫画賞に関して、あまりいい評判は入ってこなかったから。ボクも毎年「なんだかなあ」と、思いながら、新聞の隅っこにのっている受賞記事を読んでいましたからね。(引用者中略)

 結局三回審査させてもらったんだけど、なんてゆうか、審査そのものはマンネリ感が漂うっていうのかな(よくいえばなごやか?)。それと老朽化がはげしいっていうんですかね。諸先輩との感覚のズレはいかんともしがたい。じつに居心地悪かった(もちろん尊敬はしてましたよ、なにしろきら星だった方々ですから)。ただ、このままでは、今一番面白い作品が受賞することはまずない。そう、無力感ってやつにおそわれちゃったのね。」(平成14年/2002年12月・文藝春秋刊『文藝春秋漫画賞の47年』所収 高橋春男「文春漫画残念賞」より)

 文春漫画賞が、芥川賞(新人賞)路線でいくか、直木賞(商業実績賞)路線でいくか、そのときどきでコロコロ変わった、というのは知られたところです。で、けっきょく芥川賞になりきれなかったところに、大きな落とし穴があったのでしょう。つまりは面白くて表彰すべきマンガは、先輩(大先輩)マンガ家などにはわからない、って構造。いや、あるいは候補作にすら選ばれない、って構造。

 直木賞の苦しみと似ている。似通いすぎている。

 文春漫画賞については、ぜひまたいずれ、取り上げたいですね。マンガがどうの、という視点よりも、ジレンマを抱えた一つの賞として、ここのブログで胸はって取り上げていいハナシだと思いますので。

 ……ってことで、最後まで書いてきても、やっぱ『名探偵コナン』については、何ほども語れませんでした。ごめん。

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小説に描かれた直木賞」カテゴリの記事

コメント

Kokada_jnetです。いつも、どうもです。文春漫画賞については私も、似たつぶやきを発しましたが。同じこと、考えられていたんですね。

ところで、手塚治虫文化大賞も、文春漫画賞を同じ悩みを抱えているようで。

創設当初は「大賞」「優秀賞」だったのを、途中から「大賞」「新生賞」にかえてます。
まあ、それはそれで、なぜか丸尾末広が新生賞を取ったりしている、妙な現象が起きてはいるのですが。

投稿: 岡田K一 | 2010年4月12日 (月) 15時17分

岡田K一さん(…というか、もはや Kokada_jnet さん、と呼んだほうが、ワタクシとしてはしっくり来るようになってしまいました…)

手塚治虫文化大賞、ですか。それはまた調べてみたい賞が増えました。

ほんとに、いつもいろいろ教えていただきありがとうございます。

漫画界のことは知らないことばかりで……。

今後とも、よろしくです。

投稿: P.L.B. | 2010年4月12日 (月) 23時45分

毛利親子が小説好き、というのは考えたこともありませんでしたが、そう言われてみれば、コミックス19巻(ミステリ作家の失踪事件)で、蘭が本棚から「文芸時代」を取り出す場面があったことを思い出したのでした。

好きな作家の新作を雑誌で追っているということは、少なくとも蘭が私以上の読書好きであることは間違いないようです(笑)

投稿: 毒太 | 2010年4月16日 (金) 01時40分

毒太さん

おひさしぶりです!カキコミありがとうございます。

そうだったんですか、毛利蘭は「文芸時代」の愛読者のようですね。他の巻を調べるのを怠っておりました……。
ほんと、ワタクシも、雑誌掲載の段階から小説を読む人たちには、尊敬の念をいだきます。

投稿: P.L.B. | 2010年4月16日 (金) 03時15分

 滝田誠一郎「ビッグコミック創刊物語―ナマズの意地」(プレジデント社)
 http://www.amazon.co.jp/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E5%89%B5%E5%88%8A%E7%89%A9%E8%AA%9E%E2%80%95%E3%83%8A%E3%83%9E%E3%82%BA%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%9C%B0-%E6%BB%9D%E7%94%B0-%E8%AA%A0%E4%B8%80%E9%83%8E/dp/4833418983
 「第3章 直木賞を狙える作品を」に、楳図かずお先生のマンガを直木賞候補作品の社内推薦にした挿話がありました。

 菅原敬太「走馬灯株式会社(1)」(アクションコミックス)
 http://www.amazon.co.jp/%E8%B5%B0%E9%A6%AC%E7%81%AF%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE-1-%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E8%8F%85%E5%8E%9F-%E6%95%AC%E5%A4%AA/dp/4575837113
 走馬灯株式会社 第8話 笠木修道 長澤比佐志 ネタバレ ストーリー
 http://pecodiary1.blog.so-net.ne.jp/2012-09-11
 第136回直木賞を「夜に哭く」で受賞した、笠木修道先生が登場します。

投稿: 橘 まるみ | 2013年12月 5日 (木) 00時29分

橘 まるみさん、

うわあ、直木賞情報、ありがとうございます。
マンガの世界にはとんと疎いもので。ご教示、感謝いたします。

投稿: P.L.B. | 2013年12月15日 (日) 22時29分

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