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2010年1月14日 (木)

第142回直木賞(平成21年/2009年下半期)決定の夜に

 なんということだ、山本周五郎賞。そのうち、ここを通過した者でないと、直木賞をとることは許されぬ、って関門になるんじゃないでしょうね? え? もうなっていますか。

 と、今夜の第142回直木賞(平成21年/2009年・下半期)の受賞について、ああだこうだ言う前に、なによりワタクシは、次の4人の作家の方々に、お礼が言いたいのです。たぶん伝わらないとは思いますが、ワタクシにとっては忘れられない作家さんばかりですので。

 辻村深月さんの小説は、これまで、オジサンなんかが読んで面白いわきゃない、と素通りしてきてしまいました。うかつでした。「メフィスト賞作家」という、ほかの新人賞とは別の次元の十字架を背負ってしまって(?)期待されるものが多く、また広範囲にわたることと思いますが、どうかミステリーの心を忘れずに書き続けてほしいな、と勝手なお願いです。

 葉室麟さんが繰り出す、凝縮とスピード感のものがたりには、いつも心地よく酔わされます。ページをめくるたびに、何人も何十人もの登場人物が湯水のごとく湧き出てくる、葉室さん独特の世界は、どうやら文学賞の選考会では評判がよくないみたいですけど、でも。でもですよ。それが好きで葉室作品を読むのだ、っていうワタクシみたいな読者がいることは、忘れないでほしいなあ。「賞をとりにいく小説」なんてものを、仮に書いてしまって、あの作品世界が薄まっちゃうところだけは、見たくないもんなあ。

 池井戸潤さん、たぶんですけど、『空飛ぶタイヤ』と『鉄の骨』で、池井戸LOVE な読者が急増しましたよね。そのうちの一人として、仲間が増えたこと(増え続けること)が、ワタクシは何とも嬉しい! 自分の生きてる社会が、生きづらいモンになるのか、何かスカッとしたモンになるのか、全然わかりませんけど、池井戸さんの小説を読んで、新しいところに踏み出す楽しさと爽快感を、擬似体験させてもらっています。

 「直木賞」だあ? そんなモノの価値に比べりゃ、池井戸作品を読んで得られるこの楽しさのほうが、断然ワタクシには大切です。

 そういうわけで、道尾秀介さん。今回もまた、カラ騒ぎでした。いつもいつも、こんなむなしい馬鹿さわぎに付き合っていただいて、馬鹿さわいでる一人としては、申し訳ないやら、恥ずかしいやら。あ、でも「直木賞」のこと、見捨てないでくださいまし。「読者の心をぐっとつかむ若手作家は、みんな直木賞を拒絶して、ぐんぐん前に進む」なんて未来は、せつなすぎます。それはそれで面白い展開かもしれないけど。どうか、もうしばらく、哀れな直木賞のためにも、馬鹿さわぎの渦中にいてくださいまし。

          ○

 いま思い出しました。5年前、『消えた直木賞 男たちの足音編』(平成17年/2005年7月・メディアファクトリー刊)っていう受賞作アンソロジーに携わったとき、ワタクシ、こんなコラムを書きました。「なさそであった! 身内同士のW受賞」。

 小池真理子×藤田宜永ペアとか、邦光史郎×田中阿里子今日出海×今東光、などなどお馴染みの組み合わせに触れたあと、つい、親子ペアについても筆を暴走させちゃったのでした。

 そう、当時は、親子ともども直木賞落選の憂き目をみたのは、ただ一組のみ。山手樹一郎×井口朝生だけでした。そして、ついに、ですか。白石一文さん。

 すみません、今夜の受賞会見でも真っ先にそのことを聞かれたみたいで、たぶん白石さん、ヘキエキでしょうね。ここらでやめときます。

 『ほかならぬ人へ』は、「恋愛小説と一言でいったって、ピンからキリまであるのさ、『恋空』あたりと同類と思って読むと、ゲロ吐くぜ」っていう構えが、んもう、白石さんらしくて素晴らしい。イヤなレースからこれで解放されたのです。濃厚で高密度でヒトの頭をガツンと殴る、自由な白石作品を生み出していってください。

 そして、もうお一人。往年の山本周五郎受賞者。何年前ですか。え、20年以上も前?

 なぜに、佐々木譲さんが平成22年/2010年にもなって直木賞の騒ぎの場に借り出されているのか、古い直木賞ばかりを追いかけているワタクシの頭はショートぎみです。時代は常に進んでいる、ってことでしょうか。

 また今回も、北村薫さんのときに引き続き、直木賞の側が、佐々木譲さんの「権威」をお借りしてしまいました。直木賞も、両ベテラン作家に負けぬよう、もっと精進してくださいね。

 これで、佐々木譲さんの旧作を含めて大売れするのならば、万々歳。万一そうでなかったとしても、ワタクシのなかでは、佐々木さんは永遠に「山周賞作家」です。あるいは「冒険小説大賞作家」です(語呂わるすぎですけど)。

          ○

 最後はいつもどおり、速報タイムを書き残しておきます。各ニュースソースサイトにて、直木賞と芥川賞を報じた時刻です。

  • 日本文学振興会(主催者)……芥:18時58分 直:19時25分
  • 読売新聞……芥:19時03分 直:19時32分
  • 朝日新聞……芥:19時03分 直:19時34分
  • 毎日新聞……芥:19時00分 直:19時38分
  • MSN産経……芥:18時59分 直:19時38分

 いや、そんなことより今回は、Twitter をチェックしてたんですが、まあ、ツイートの早いこと早いこと。芥川賞も直木賞も、主催者サイトより数分早く、結果を知らせてくれる方がいる……。主催者ページが維持してきたトップの牙城、崩れたり? この戦いは次回につづく。

 そうだ、Twitter といえば、直木賞受賞者の記者会見の様子が、ここ asahicom でわかっちゃいます。まったく、なんちゅう時代だ。嬉しすぎるぞ。

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